院長コラム

妊娠中は自宅の内装工事を控えた方がいいかも知れません~内装工事と男児の外性器異常との関係~

「Medical Tribune」(2019年10月号)という医学情報誌に、信州大学小児医学教室の先生が研究されました「妊娠中の自宅内装工事による胎児への影響について」の記事が掲載されていました。
今回は、この情報を共有したいと思います。

 

 

研究の概要

この研究は、「妊娠中の自宅内装工事および職業上の有機溶剤やホルムアルデヒドへの曝露が児の先天性形態異常の発生にどのような影響を及ぼすか」を調べる、日本で始めての調査であるとの事です。

対象は「子どもの健康と環境に関する全国調査」に参加した約67,000例(男児:約34,000例、女児:約33,000例)です。
また、検討対象に含まれた有機溶剤はシンナー、ドライクリーニング用洗浄剤、ペイント塗料などです。
検討された先天性形態異常は、生後1か月までに診断された先天性心疾患、口唇口蓋裂、男児の外性器異常、四肢形成異常、消化管閉鎖の5項目です。

 

 

研究結果【男児の外性器異常のリスク高まる】

妊娠中に自宅の内装工事が行なわれていたのは約2,100例で、発生した先天性形態異常は先天性心疾患756例、口唇口蓋裂160例、男児の外性器異常253例、四肢形成異常176例、消化管閉鎖は45例です。

解析の結果、先天性心疾患、口唇口蓋裂、四肢形成異常、消化管閉鎖については内装工事の有無で有意差はありませんでしたが、妊娠中に自宅の内装工事が行なわれた母親から出生した男児は、行なわれていなかった母親から出生した男児に比べて、外性器異常の発生率が有意に高かったとのことです。

ちなみに、職業上、有機溶剤やホルムアルデヒドを使用していた約6,300例に関しては、全ての先天性形態異常に関して、有意差はなかったとのことです。

一般的に、器官形成期といわれる妊娠5週から11週頃までに催奇形因子にさらされると、胎児に先天異常が起こりやすいといわれています。有機溶剤やホルムアルデヒドなどの化学物質と先天性形態異常との関係は、今後益々明らかになると思われます。

 

 

今回の研究結果からは、少なくとも妊娠初期の妊婦さんがいらっしゃるご家庭では、内装工事を避けるか、妊婦さんには他の部屋で過ごして頂くことが無難かも知れません。
「出産前に部屋の内装をきれいにしよう」とお考えの方はお気を付け下さい。