院長コラム

教職員対象の性教育講習会のご報告(3)

今回は、某都立高校の教職員の先生方を対象とした先日の講習会から、「性感染症と予防法」の概略をご報告致します。

 

 

性感染症の潜伏期間と初期症状

性感染症感は性行為によって、すなわち精液や頚管粘液を介して、あるいは唾液を介して、あるいは皮膚粘膜の接触により病原体が感染します。
感染から症状が出現するまでの潜伏期間や初期症状は疾患によって異なります。例えば性器ヘルペスの潜伏期は2~10日で、陰部の水疱、潰瘍、発熱、有痛性の鼠径リンパ節腫脹がみられます。最近急増している梅毒は、10~30日の潜伏期間を経て、感染部位に硬い丘疹を認め、その後無痛性の潰瘍や鼠径リンパ節腫脹がみられます。
ただし、感染していても必ずしも症状が出るとは限りません。わが国で最も多いクラミジア感染症の場合、帯下増量や下腹部痛を認めることもありますが、感染者の多くは無症状であり、症状がなくても相手に感染することがあります。
つまり、相手が性感染症にかかっているかどうかを、あるいは自分も感染しているかどうかを見た目や自覚症状だけで判断できるとは限りません。

 

 

性感染症予防法

唯一の確実な予防法は性行為を(性交だけでなく、オーラルも)行なわないことです。もし、性行為を行なうのであれば、少しでも性感染症に罹患する可能性を減らすため、せめて不特定多数との性行為は避ける必要があります。お付き合いをしている1人のパートナーとだけ性行為を行なうことが望ましいです。
ただし、付き合っているパートナーであっても安心はできません。「セックスの相手は全員性感染症の感染者かも知れない」との前提で、自分の身を守るためコンドームの使用は必須です。さらに、口は第2の性器と言われているぐらい、口腔から性器へ、あるいは性器から口腔へ、性感染症の病原体が感染するのは簡単です。特に、クラミジア、淋菌、ヘルペスウイルス、そして梅毒などはオーラルセックスで感染が広がりやすい性感染症です。性交の時はもちろん、オーラルの時もコンドームが必要です。

 

 

女性と性感染症

女性が性感染症に感染すると、妊娠に与える影響も少なくありません。クラミジア感染症の場合、不妊症や異所性妊娠(子宮外妊娠)・流早産の原因になることがあり、適切に治療していないと新生児肺炎・結膜炎などに罹患する可能性もあります。
また、性器ヘルペスや尖圭コンジローマの場合、経腟分娩で児に感染してしまい、重篤な状態になる可能性があるため、予め帝王切開となるケースもあります。
このように性感染症は、ご本人だけでなく次世代にまで悪影響を及ぼす危険性があります。
100%ではありませんが、コンドームの使用によりかなり性感染症の予防ができますので、「セックスする時は、オーラルセックスを含めてコンドームを使用する。」
これをカップルの習慣化にすることが、性感染症から自分たちと将来の赤ちゃんを守るための必要条件です。

 

 

今回の講習会では、高校の教職員の先生方が対象でしたので、「性のトラブルがあれば、恥ずかしがらずに女性は産婦人科へ、男性は泌尿器科へ早めに受診するよう、学生さんへお伝え下さい」というメッセージで締め括りました。
私自身、高校の教職員の方に性についてお話しすることは今回が初めてでしたが、大変貴重な経験となりました。
今後も地域の中学校、高校、大学の学生や教職員、事業所などを対象に女性の性について、お伝えする機会を作っていけたらと思っています。