院長コラム

「婦人科特定疾患治療管理料」について

2020年の今年、器質性月経困難症(子宮内膜症・子宮腺筋症・子宮筋腫などが原因の月経困難症)が、わが国初の「婦人科特定疾患」に指定されました。
それに伴い、器質性月経困難症の患者さんでホルモン剤にて管理されている場合に限り、3か月に1回「婦人科特定疾患治療管理料」250点(3割負担:750円)をお願いすることになりました。
今回は、当院でも9月から導入しています「婦人科特定疾患治療管理料」について説明します。

 

器質性月経困難症の診断

月経困難症には、子宮内膜症・子宮筋腫・子宮腺筋症など器質的な疾患に伴う「器質性月経困難症」と、器質的疾患がみられない「機能性月経困難症」の二種類があります。
「婦人科特定疾患治療管理料」の対象になるのは「器質性月経困難症」であり、「機能性月経困難症」の方からは、薬物療法の内容によらず「管理料」は頂きません。
「器質性月経困難症」の原因の中でも最も多くを占めるのは「子宮内膜症」で、確定診断するためには腹腔鏡による観察や組織学的検査が必要です。
ただし、実際には内診所見、超音波検査、MRI検査など、体への負担が少ない診察・検査により、子宮内膜症に特徴的な卵巣チョコレート嚢胞や深部病変の所見が認められる場合を「子宮内膜症」と診断しています。
尚、「子宮筋腫」「子宮腺筋症」は、外来での超音波検査で診断することがほとんどです。

 

器質性月経困難症に対するホルモン療法

月経困難症の原因となっている子宮内膜症・子宮筋腫・子宮腺筋症などの治療に用いる薬剤には、消炎鎮痛剤・漢方薬・ホルモン製剤など数種類あります。その内、「婦人科特定疾患治療管理料」の対象になるのはホルモン製剤のみです。
子宮内膜症に対しては、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP製剤:ヤーズフレックス配合錠・ジェミーナ配合錠など)と黄体ホルモン製剤(ディナゲスト錠1mg・0.5mgなど)が第1選択薬となります。
その他、人工的に閉経状態にする偽閉経療法(リュープロレリン1.88注など)を行うこともあります。
また、子宮筋腫に対する治療として、レルミナ錠を用いた偽閉経療法が現在主流になっています。

 

「診療計画書」に基づく説明と同意

どのような疾患であっても、我々医師は患者さんに対し、病状の説明、治療方針、薬剤の副作用などを説明し、ご同意・ご納得頂いた上で治療を行っています。
今回、器質性月経困難症は「婦人科特定疾患」に位置付けられたため、口頭での説明やご同意だけでなく、「診療計画書」の作成が勧められています。
今後、「婦人科特定疾患治療管理料」対象の方には、当院で作成しました「診療計画書」に基づき説明させて頂き、治療にご同意頂いた方にはご署名を頂戴することがある旨、ご了承下さい。

 

器質性月経困難症は、女性の生活の質を低下させるだけでなく、不妊症やがんに繋がる可能性があります。
そのため、早期に発見し、治療を行い、長期にわたり適切に管理し、重症化を予防することが求められます。
この度、器質性月経困難症が「婦人科特定疾患」に指定されたことは、社会全体が器質性月経困難症の重大性を認めた表れです。
女性の一生に影響する可能性がある器質性月経困難症に対し、我々は引き続き真摯に取り組んで参ります。