院長コラム

妊娠中のシートベルト着用について

ゴールデン・ウィーク真っ只中ですが、自動車でご旅行されている妊婦さんも多いかと思います。
今回は、妊婦さんの正しいシートベルトの装着について説明します。

 

 

妊婦の自動乗車中の事故

わが国の人口統計・警察統計では、妊婦さんの交通事故に関するデータは公表していないため実態は不明です。ただし、ある試算によると、妊婦さんの自動車乗車中事故死亡は年間約10人、負傷者は年間約8000人、胎児死亡は年間約800人と推定されています。

 

 

シートベルトの効果

妊婦さんに限りませんが、自動車乗車中のシートベルト着用有無別の致死率は、着用者の0.15%に対し、非着用者は15倍の2.17%と報告されています。ちなみに座席位置別にみると、運転席では非着用者は着用者の60.6倍、助手席では19.8倍、後部座席では4.5倍でした。

また、海外の報告ですが、妊婦さんのシートベルト着用により、衝突時の子宮内圧上昇が抑制され、胎盤早期剥離や子宮破裂などの頻度が低下することで、交通事故時の母児死亡率低下が期待できるとのことです。

ただし、妊娠するとシートベルトの着用率は低下するといわれており、正しくシートベルトを装着することを習慣づけることが大切です。

 

 

妊婦さんの正しいシートベルト装着方法

「産婦人科診療ガイドライン 産科編2017」に記載されている妊婦さんの装着方法について説明します。

① 常に肩ベルトと腰ベルトの両方を装着する。

② 腰ベルトは妊娠子宮のふくらみを足側に避けて恥骨上の置き、子宮のふくらみを横切らない。

③ 肩ベルトは妊娠子宮のふくらみを頭側に避けて、両乳房の間を通って側腹部へ通し、子宮のふくらみを横切らない。

④ ベルトが緩まないようにぴったりと心地よく身体にフィットするように調節する。

⑤ 妊娠子宮のふくらみとハンドルの間には若干の空間ができるよう、座席シートの位置を前後に調節する。

 

 

妊娠中はできれば運転は避け、後部座席に乗車し、3点式シートベルトを適切に装着して下さい。
万が一、衝突事故が発生した場合は、下腹部痛や出血を認めればもちろん、自覚症状がない場合でも、是非ご連絡下さい。