院長コラム
ホルモン補充療法(HRT)に使用される薬剤
ホルモン補充療法(HRT)は更年期障害、閉経後骨粗鬆症など、中高年女性特有の病気や健康維持に欠かせない治療です。
今回は、当院で主に処方している薬剤について説明します。
HRTに使用するホルモン
主体は卵胞ホルモン(エストロゲン)ですが、子宮を有する方がエストロゲン製剤のみを長期に服薬すると子宮体がん・子宮内膜増殖症といった子宮内膜病変が増加します。
そこで、子宮内膜の増殖を抑える黄体ホルモン製剤の併用またはエストロゲン・黄体ホルモン配合剤の使用が必要になります。
尚、手術などで子宮を摘出された方に対しては、通常エストロゲン製剤のみ処方します。
エストロゲン製剤の種類
<ジュリナ>経口
1日1錠0.5mgを低用量として用いています。主に更年期障害、特にのぼせ・ほてり・発汗などの血管運動神経症状や膣萎縮症状に有効です。
1日1錠で効果が弱い時や骨粗鬆症の治療効果を上げたい時には、1日2錠1.0mgを投与します。
<エストラーナ>経皮
2日に1枚を腹壁などに貼付する経皮製剤です。内服薬ではないので胃腸や肝臓への負担は少なく、脂質代謝へ悪影響もありません。
また、血管運動神経症状や膣萎縮症状だけでなく、抑うつ症状への効果も期待できます。
尚、子宮を有している方は、経皮のエストロゲン製剤に加えて黄体ホルモン製剤の内服が必要です。
<ディビゲル>経皮
製薬会社と化粧品会社が共同開発したゲル状の薬剤で、1日1包1mgを大腿の皮膚などに擦り込ませます。比較的皮膚刺激性が少ないのが特徴です。
黄体ホルモン製剤の種類
<デュファストン>経口
周期的投与の場合は、1日2錠10mgを14日間エストロゲン製剤に併用し、連続投与の場合は1日1錠5mgを服用します。
5年以上の服用でも乳がんを増加させるリスクはありません。
<プロベラ>経口
周期的投与の場合は、1日2錠5mgを12日間エストロゲン製剤に併用し、連続投与の場合は1日1錠2.5mgを服用します。
子宮内膜増殖を抑制する作用が強いのが特徴です。
エストロゲン・黄体ホルモン配合剤の種類
<メノエイドコンビパッチ>経皮
週に2回貼り替えるだけで内服薬の併用も必要ないため、主に胃腸に負担がかかりやすい方に用いられます。
<ウェールナラ>経口
閉経後骨粗鬆症のみが保険適応になっていますが、1日1錠服用するだけで効果を発揮します。
患者様の症状、体質、生活習慣などで薬剤を選択し、効果の現れ方や副作用などを考えて薬剤の変更・投与量の増減を検討します。
診察の際、副作用やお気づき点を教えて頂ければ幸いです。