院長コラム

妊娠・出産に伴う女性ホルモンの変動とメンタル状態の変化

妊娠中やお産後(周産期)にメンタル不調をきたす方は少なくありません。
周産期のうつ病は約12%、不安症や強迫症は約20%との報告があり、マタニティブルーズ(産後3~10日にみられる軽いうつ状態)は約30%にみられるとも言われています。
今回は、妊娠・出産に伴う女性ホルモンの変動と精神状態の変化について情報提供致します。

妊娠初期:エストロゲンよりプロゲステロンが強く,メンタル不調に

妊娠前は、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)は卵巣から分泌されますが、妊娠後は次第に胎盤からの分泌が増加します。
妊娠20週頃まではエストロゲンよりプロゲステロンの働きが強くなり、抑うつ状態の妊婦さんが増加する傾向にあります。

妊娠中期以降:エストロゲンが優位となり比較的メンタルは安定

妊娠20週頃からお産までの時期は、プロゲステロンよりエストロゲンの働きが強くなります。
そのため、妊娠初期にみられたメンタルの不調が中期以降軽快する傾向があるようです。

分娩後:胎盤の娩出によりエストロゲンが急激に減少、再びメンタルが不安定に

胎盤からエストロゲンとプロゲステロンが分泌されていますので、赤ちゃんが生まれて後に胎盤も娩出すると、両ホルモンとも急速に減少します。
特に、エストロゲンの急速な消退がマタニティブルーズや産後うつ病の一因になる、と考えられています。

妊娠前からメンタル疾患の薬を服用している方は、妊娠したからといって、自己判断で服薬を中止、あるいは服薬量を減らすことはしないで下さい。
また、授乳中は、自己判断で服薬をやめたり、服薬のために母乳哺育をあきらめることのないようにしましょう。
特に、メンタルクリニックに通院中の方は、妊娠が判明したらすぐに、主治医の精神科医にお伝えして、ご相談下さい。