院長コラム

メノポーズ週間に考える更年期障害

「メノポーズ」とは「閉経」の事で、毎年10月18日は「世界メノポーズデイ」と定められています。
日本では10/18~24の1週間を「メノポーズ週間」と制定されており、日本女性医学会を中心に、更年期医療関連の啓発イベントが開催されています。
そこで今回は、更年期障害に対する当院の対応について説明します。

更年期障害とは?

「更年期」とは、閉経の前後5年の合計10年間を指し、主に40~50代に当たります。
特に月経が不順になり、血管運動神経症状(ほてり・発汗など)・身体症状(肩こり・関節痛・冷え・動悸・めまい・疲労感など)・精神症状(不眠・いらいら・抑うつなど)といった症状が多岐わたってみられた場合、「更年期症状」の可能性があります。
ただし、貧血、甲状腺機能異常、精神科疾患、整形外科的疾患、循環器科的疾患、耳鼻咽喉科的疾患など鑑別が必要な場合があるため、各種血液検査や他科へ紹介する事もあります。
尚、更年期症状により日常生活に支障をきたす場合は「更年期障害」といい、治療対象となります。

更年期障害の治療法

当院では、患者さんの年齢、症状、体質、既往歴、合併症などを考えて、適切な治療法を検討し、ご本人と治療法について相談させて頂いています。

  • ホルモン補充療法(HRT):更年期障害治療の柱

エストロゲンの低下が更年期症状の主因でるため、血中エストロゲン濃度が低値の場合で、エストロゲン製剤が禁忌でなければ、HRTを第一選択としてお勧めしています。

  • 漢方療法:多彩な症状に有用

当帰芍薬散・加味逍遙散・桂枝茯苓丸などの漢方薬は、多彩な症状を認める方に有効です。
HRTができない方の第一選択であり、ホルモン剤はじめ、他剤と併用するケースも少なくありません。

  • 抗うつ薬(SSRI):抑うつが強い方に使用

メンタルクリニックで「うつ病」は否定された場合でも、HRTや漢方薬で抑うつ症状が改善されない時、比較的使用しやすい抗うつ薬「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」を処方することがあります。

  • 自律神経調整薬(グランダキシン錠)

グランダキシンは自律神経系のバランスを整え、末梢血流量を増加させる作用があります。HRTが禁忌の方で、ほてり・発汗といった血管運動神経症状や身体症状を見られる方に使用することがあります。

  • エクオールサプリメント(エクエル)

植物エストロゲンの代表格である大豆イソフラボン(エクオール)のサプリメント「エクエル」も更年期症状に有用な場合があります。
主に、ホルモン治療に抵抗がある方や閉経前の更年期症状にお勧めしています。

  • プラセンタ注射(メルスモン皮下注)

ヒトの胎盤由来のエキスで、更年期障害に保険適応のある皮下注射薬です。
週に2~3回注射して頂くとより有効で、他の治療薬との併用も可能です。

  • 腟外陰部レーザー治療(モナリザタッチ)

エストロゲンの低下や加齢により、腟・外陰部の乾燥感・灼熱感・かゆみ・疼痛・性交痛などをきたすことがあります。このような不快感に対して、当院では腟外陰部レーザー治療を行っています。
HRTなどの薬物療法とモナリザタッチを併用されている方も少なくありません。

「更年期障害は我慢するのが当たり前」といった考えのせいで、生活の質が低下する方も少なくありません。
また、更年期障害が仕事に与える影響も大きく、日本経済にとっても甚大な損害となっているそうです。
更年期に入り、様々な不快症状がみられましたら我慢をせず、婦人科を受診されることをお勧めします。