院長コラム

女性の睡眠トラブル

先日、ある講演会で精神神経科の先生から「女性と不眠」についてのお話を伺いました。
ほぼ生涯にわたり、女性は男性に比べて不眠症になりやすい、とのことです。
今回は、講演会での学びを含め、女性の睡眠トラブルについて情報共有したいと思います。

睡眠時間が削られる日本人女性

本来、睡眠時間は7時間以上が望ましいと言われていますが、日本の女性の場合、4割以上の方が平均7時間未満であった、との報告があり、男性よりも短かったそうです。
世界的に見ても日本人女性の睡眠時間は短いことが知られており、その理由として様々な社会的要因が考えられています。
男性にとって睡眠時間が削られる要因は主に「仕事」ですが、女性の場合は「仕事」に加えて、「家事」「育児」「介護」の影響が強いと言われています。
諸外国に比べて、「家事」「育児」「介護」の負担が女性にかかり過ぎていることが、日本人女性の短い睡眠時間に影響していると思われます。
男性側がこのあたりを認識し、様々な負担を手分けして行うことは大切であると思いますが、社会全体としてサポート体制を改善する必要もあるかもしれません。

女性ホルモンの睡眠に与える影響

女性ホルモンには、卵子が入っている卵胞から分泌されるエストロゲンと、排卵後の黄体という組織から分泌されるプロゲステロンという二つがあります。
どちらの分泌量も、月経周期や妊娠・閉経などのイベントによって変化し、女性の心身の状態に影響を及ぼします。
性成熟期女性の場合、排卵後はプロゲステロンの働きが強く、深部体温が上昇するため睡眠の質が低下することが知られています。
また、更年期女性の場合、エストロゲンの急激な変化に伴い、ほてり、発汗、抑うつ、いらいらといった更年期障害により、寝つきが悪い(入眠障害)、夜間目が覚める(中途覚醒)などの不眠に悩まれる方も少なくありません。

「女性は社会的、ホルモン的に不眠症になりやすい」ということは、個人の人生の質の低下だけでなく、家族関係の悪化、社会的経済損失にも繋がるように思われます。
産婦人科医として、お一人おひとりの症状、体質、社会的背景などを考慮して、睡眠薬・ホルモン剤・漢方薬などを適切に使用することが大切と考えています。
月経周期や更年期に不眠に悩まれている方は、まずは婦人科を受診してみてはいかがでしょうか。