院長コラム

女性のトータルヘルスケアについて

先日、慶応義塾大学名誉教授で内閣官房参与の吉村泰典先生の講演会に参加致しました。テーマは「少子高齢化社会における医療のパラダイムシフト」。
これからの産婦人科診療に関するご講演で、多くの事を学ばせて頂きました。

今回、「院長のコラム」も50回目となりますが、講演会での学びから得た、今後の産婦人科診療に対する私の考えについて、お伝えしたいと思います。

 

 

女性の平均寿命と健康寿命のギャップ

昨年、厚生労働省から2016年の男女平均寿命が発表されました。男性の80.98歳に対し、女性は87.14歳で、6歳以上女性の方が上回っていました。

しかし、「健康寿命」すなわち健康で生活できる期間は、男性で72.14歳と推計され、平均寿命との差は約8.8歳となります。

一方、女性の健康寿命は74.79歳と推計され、平均寿命との差は約12.4年となります。

つまり、寝たきりなど、自立して生活できない期間が、男性で7~8年であるのに対し、
女性では12年以上と大きく上回っています。

 

 

女性のトータルヘルスケア

女性の健康寿命を平均寿命に近づけるためには、女性の健康を生涯にわたり包括的にサポートすることが、非常に大切であると考えられています。

男性と異なり女性の場合は、女性ホルモン分泌の状況により、様々なステージが存在します。

女性ホルモンが分泌し、上昇し始める思春期、
女性ホルモンが安定する性成熟期、
ホルモン環境の劇的な変化をきたす妊娠期・産褥期、
女性ホルモンが急激に低下する更年期、
そして女性ホルモンが低値で安定する老年期。

それぞれのステージの過ごし方で、健康寿命は大きく左右されます。
ホルモン環境に着目しながら、心的要因、環境要因なども踏まえて、生涯にわたり女性の健康を包括的にサポートすること、つまり「女性のトータルヘルスケア」は産婦人科医の大切な役割といえます。

 

 

女性の健康力の向上と維持を目指して

トータルヘルスケアの目的は、女性の健康力の向上と維持です。

思春期の過ごし方が、次の性成熟期の健康力に影響を及ぼし、更には妊娠期・産褥期の健康にも繋がります。

また、性成熟期から老年期の移行期である更年期は、健康寿命を考える上でとても重要な時期になります。

それぞれのステージの健康力を向上させ、維持するためには、啓発(教育)・予防・治療の充実が必要です。

 

 

トータルヘルスケアから考える当院の役割

当院にいらっしゃる方は、子宮癌検査、妊婦健診などの「予防」目的、ホルモン剤や漢方薬などを用いた薬物療法や手術・分娩といった「治療」目的がほとんどです。

これからは「治療」を更に充実させていくと同時に、将来的な病気の「予防」を広めるため、「未病の方を予防につなげる啓発(教育)活動」にも力を入れていきたいと考えています。

そのことが、各ステージでの女性の幸せ、そして健康寿命の延長に繋がると信じています。

この「院長のコラム」も啓発の一助になれば幸いです。
引き続き、宜しくお願い申し上げます。