院長コラム

Rhマイナスの女性が妊娠したら

血液型にはABO型以外にRh(+)とRh(-)があることをご存知の方も多いでしょう。
実は血液型にはたくさんの種類があり、人の赤血球の膜には、400種類程の血液型抗原とよばれる“突起”があることが知られています。
今回は妊娠の際に大変重要となる血液型、Rh(D)型について説明します。

 

 

Rh(D)抗原プラスとマイナス

一般的にRhプラス、Rhマイナスといわれている血液型は、それぞれRh(D)抗原(+)とRh(D)抗原(-)のことで、赤血球の表面にRh(D)抗原があるのか、ないのかの違いです。

もし、Rh(D)抗原(-)の人の血液の中に、Rh(D)抗原が入り込んでしまうと、その抗原を“敵”とみなして、抗原を攻撃する抗Rh(D)抗体という“戦闘機”が作られます(感作)。

その戦闘機は、Rh(D)抗原のみをターゲットにして攻撃し、赤血球を溶かしてしまいます。

 

 

Rh(D)抗原(-)の妊婦さんと胎児

もし、Rh(D)抗原(-)の女性がRh(D)抗原(+)の男性との間で妊娠した場合、胎児のほとんどはRh(D)抗原(+)になります。

Rh(D)抗原(-)の妊婦さんが一度もRh(D)抗原(+)に感作したことがなければ、“戦闘機”は存在しません。

ただし、一度でも感作の機会があり、もし“戦闘機”を持っていた場合は、この“戦闘機”が胎盤を通り抜け、胎児の赤血球を攻撃し、胎児貧血などの重大な病気を引き起こします。

 

 

妊婦さんに感作させない方法

そのため、妊婦さんに“戦闘機”を作らせない、つまり感作させないことが大切になります。

通常はRh(D)抗原(+)の血液を輸血しなければ感作しません。もし、Rh(D)抗原(+)が血中に入り込んだとしても、“戦闘機”が作られる前、つまり感作する前にRh(D)抗原(+)を駆除すれば、“戦闘機”は作られずに済みます。

そこで、感作の可能性がある以下のケースでは、Rh(D)抗原(+)を駆除するために「抗D免疫グロブリン」という“人工的な戦闘機”を筋肉注射します。

① 妊娠28週前後:妊娠28週以降になると胎児の血液による感作のリスクが高まります。

② 分娩後72時間以内。

③ 妊娠7週以降まで児生存が確認できた自然流産後など。

 

 

尚、「抗D免疫グロブリン」を筋肉注射した際、その日付と医師名等を記載したカードをお渡ししますので、なくさないように大切に保管して下さい。