院長コラム

卵巣腫瘍「皮様嚢腫(ひようのうしゅ)」について

卵巣腫瘍には大きく分けて、良性腫瘍、悪性腫瘍、境界悪性腫瘍があり、皮様嚢腫は比較的若年の女性にしばしば認められる、代表的な良性卵巣腫瘍です。
今回は皮様嚢腫について説明します。

 

 

皮様嚢腫とは

皮様腫瘍は、脂肪、毛髪、歯牙、軟膏などを含んでおり、その特徴的な超音波検査所見から診断することが多いです。

ただし、中には他の卵巣腫瘍や黄体嚢胞といった生理的な卵巣の変化との鑑別が困難な場合があります。

 

 

茎捻転に注意

下腹部痛などの自覚症状がなければ経過観察が一般的ですが、6cm以上の腫瘍では茎捻転をきたす可能性が高くなります。

茎捻転とは、卵巣の根元にある、血管を含む茎のような箇所がねじれてしまうことで、その症状は、捻転の程度により異なります。

卵巣の根元には、卵巣に血液を送る動脈と卵巣から血液が戻ってくる静脈があり、静脈の方が動脈より血管壁が薄く、茎捻転で血行障害を起しやくなります。

茎捻転が軽度であれば、一時的に静脈の血行障害が生じ、卵巣が鬱血するため下腹部の鈍痛をきたしますが、茎捻転が自然に直ると、血行も元に戻り痛みが消失します。

茎捻転がもう少し強くなると、自然に茎捻転が直ることがなく、鈍痛は継続します。さらに茎捻転が増強すると、動脈まで血行障害が生じ、下腹部痛が増強し持続します。

 

 

茎捻転の治療

茎捻転をそのまま放置しておくと卵巣が壊死するため、可能な限り早急な手術が必要です。

茎捻転発症後24時間以上経過した場合、卵巣組織の不可逆的変化がはじまり、卵巣を温存することは無意味とも言われています。
発症後短時間であれば捻転を解除し、腫瘍部のみ摘出します。

もし卵巣が壊死している場合には、腫瘍部分だけでなく、卵巣、卵管という付属器全体を切除する必要があります。

尚、皮様嚢腫は再発や対側の発生頻度が比較的高いため、術後も定期的な検診が必要になります。

 

 

当院では、皮様嚢腫の患者様に対して、内診と超音波検査を定期的に行い、必要に応じてMRI検査致します。
増大傾向や下腹部痛が認められるようになったら、東京医療センター、関東中央病院、厚生中央病院などの高次施設へ紹介致します。