院長コラム

若年女性の月経不順・無月経に対して行うホルモン療法

思春期から性成熟期女性の月経不順・無月経といった卵巣機能不全に対して、女性ホルモン製剤を用いた治療が基本になります。
今回は、当院で若年女性に対して主に行っておりますホルモン療法について説明します。

 

ホルムストローム療法

ホルムストローム療法とは、無排卵で黄体ホルモンの分泌が起こらない月経異常に対して、黄体ホルモン製剤のみを投与する治療法です。
子宮内膜を厚くさせる作用のあるエストロゲンがすでに分泌されている方に、黄体ホルモン製剤を数日間投与したあと休薬すると、子宮内膜が剥がれて月経様の子宮出血をきたします。
周期的に服薬と出血を数か月繰り返し、その後休薬すると、自然に排卵および月経がみられることがあります。
また、エストロゲンが十分に分泌しているのにも関わらず子宮内膜が剥がれないと、子宮内膜がんのリスクが高まります。ホルムストローム療法は、周期的に内膜を剥がして出血を起こさせることにより、子宮内膜の悪性化を防ぐことも目的としています。
当院では、多嚢胞卵巣症候群などの無排卵性周期症の方や、エストロゲン高値で無月経の方に対し、デュファストン錠(10~15㎎/日)あるいはプロベラ錠(5㎎/日)を月に10~12日間、周期的に使用しています。

 

カウフマン療法

エストロゲンおよび黄体ホルモンの両者の分泌がない無月経に対して、エストロゲン製剤と黄体ホルモン製剤の両方を投与する治療法です。
エストロゲン製剤で子宮内膜を厚くさせ、その後エストロゲン製剤に黄体ホルモン製剤を加えることで、人工的に排卵後の子宮内膜状況を作ります。その後休薬すると、子宮内膜が剥がれて月経様の出血をきたします。この治療を数か月周期的に行うことで、自然に排卵および月経がくることを期待する治療法です。
当院では、エストロゲン低値の無月経の方に対して、プレマリン錠(0.624~1.25㎎/日)を21日間処方し、後半の14日間はデュファストン錠(10~15㎎/日)あるいはプロベラ錠(5㎎/日)を一緒に服用して頂いています。

 

若年の月経不順・無月経の方の中には、たまにある月経時に疼痛が強く、しばらくは妊娠を希望しない方もいらっしゃいます。
そのような方には、月経困難症に保険適応があり、避妊効果が高い低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)を処方することもあります。
ただし、その場合でも処方の前に、超音波検査や血液検査で月経不順・無月経の原因を評価し、適切なホルモン療法を提供するようにしています。