院長コラム

喘息と経口避妊薬(OC)・低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)

医学情報誌「メディカルトリビューン2020年12月」に「経口避妊薬で喘息の重症化リスクが低減した」との記事が掲載されていました。
今回はこの記事を参考に、喘息と経口避妊薬(OC)・低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)について説明します。

 

エストロゲン・プロゲスチン配合薬(EP製剤)の長期使用で喘息重症化のリスクが低減

ヨーロッパでの研究によると、EP製剤を一度も服用したことがない群(不使用群)に比べて、過去にEP製剤を服用していたことがある群も、現在EP製剤を服用している群も、重度の喘息発作リスクは低かったとのことです。
また、EP製剤使用期間が1~2年では不使用群と比べて差はありませんでしたが、3~4年の使用で約5%、5年以上の使用で約10%もリスクが低かったと、報告されています。
つまり、「EP製剤を長期間使用することが、喘息重症化の予防に繋がるかもしれない」という事です。

 

エストロゲンの急降下を避ける服用方法

女性の喘息発作は月経周期に関連していることが知られており、特に月経初日前後に重篤な発作をきたしやすいといわれています。これは、月経時の急激なエストロゲン低下が原因の一つとも考えられています。
OC・LEPを服用することで、血中のエストロゲン濃度はほぼ一定に保たれます。OC・LEPを休薬すると血中のエストロゲンは多少減少して出血しますが、あまり大きな急降下ではないため、喘息発作が起き難いのかも知れません。
より長く血中エストロゲン濃度を一定にするには、休薬せずにOC・LEPを長期間連続して服薬することが望ましいと言えます。月経困難症の治療薬であるLEP製剤は数種類ありますが、中でも77日間連続服用可能な「ジェミーナ配合錠」、120日間連続服用可能な「ヤーズフレックス配合錠」が望ましいかもしれません。

 

性ホルモンの喘息に与える影響のメカニズムについては未だ不明な点も多いようです。
ただし、少なくともOC・LEPは喘息にとってメリットはあっても、あまりデメリットはないように思えます。
喘息をお持ちの方が避妊や月経困難症の治療を希望される場合は、ホルモン剤が禁忌でない限り、まずはOC・LEPの使用をご検討下さい。