院長コラム

月経トラブル+皮膚トラブルの方には「桂枝茯苓丸加ヨク苡仁」を検討

桂枝茯苓丸加ヨク苡仁(ケイシブクリョウガンカヨクイニン)は、桂枝茯苓丸にヨクイニン(ハトムギの種皮を除いた種子)を加えた漢方薬です。
ヨクイニンには、にきび、しみ、手足のあれに対して効能があるため、皮膚科領域ではよく用いられる漢方薬のようです。
今回は、株式会社ツムラのリーフレットなどを参考に、婦人科領域における桂枝茯苓丸加ヨク苡仁の使い方について考えてみました。

 

桂枝茯苓丸加ヨク苡仁の使用対象

桂枝茯苓丸の使用対象と同様、体力が中等度もしくはそれ以上の方で、下腹部の圧痛を訴え、無月経・過多月経・月経困難症・更年期障害(頭痛、肩こり、めまい、のぼせ、冷え症など)が見られる方が対象になります。
その上で、肌のあれ、肝斑、にきび、肬贅(イボ)などの皮膚症状がある場合に用いることが勧められています。ちなみに、ヨクイニンには、免疫力を高める作用や細胞障害による抗腫瘍作用などにより、イボの治療効果が認められるそうです。

 

尖圭コンジローマへの応用

尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の6型または11型による性感染症であり、外陰部、腟内、肛門周囲などに発生するイボです。
尖圭コンジローマ治療の第1選択は「ベセルナクリーム」の塗布であり、必要に応じて外科切除やレーザー蒸散を行いますが、再発することも少なくありません。
実は、ヨクイニン服用が尖圭コンジローマ治療に有効であったとする報告があり、尖圭コンジローマだけでは保険適応にはならないものの、月経異常を認める方であれば、桂枝茯苓丸加ヨク苡仁を併用することは有用かも知れません。

 

子宮頚部異形成への応用

子宮頚がんは発がん性の高いHPVの持続感染が原因であり、軽度異形成、中等度異形成、高度異形成、上皮内がんを経て、浸潤がんとなります。
子宮頚部異形成が長引いた場合、子宮頚部円錐切除やレーザー蒸散を行うことが多いですが、桂枝茯苓丸加ヨク苡仁の服用によりHPVが消失したとの報告もあります。
今のところ標準的な治療ではなく、子宮頚部異形成だけでは保険適応にはなりませんが、月経異常、更年期障害、皮膚症状が見られる方であれば、桂枝茯苓丸加ヨク苡仁の服用は検討に値します。

 

婦人科領域でよく用いられる桂枝茯苓丸ですが、ヨクイニンが加わることで守備範囲がかなり広がります。
効能・効果が適している方に対して、今後は桂枝茯苓丸加ヨク苡仁をより積極的に使用していきたいと考えています。