院長コラム

受動喫煙法施行をきっかけに是非禁煙を

2020年4月1日、「東京都受動喫煙防止法条例」および「改正健康増進法」が施行されました。
これにより、決められた場所以外の喫煙はできなくなりました。また、感染拡大が続いている新型コロナウイルス感染症は、喫煙が肺炎重症化のリスクの一つといわれています。
喫煙者の方にとっては、辛いかもしれませんが、禁煙する絶好のチャンスです。
今回は、産婦人科領域の喫煙のリスクについて説明します。

 

 

低用量ピルを飲むなら喫煙しない

妊娠を希望しない女性は、原則として低用量ピル(OC)による避妊が必要です。ただし、35歳以上で15本/日以上の喫煙者は、血栓症のリスクが高まるため“OC禁忌”となっています。もし、35歳未満あるいは14本/日以下の喫煙者であったとしても、OC服用するのであれば、できるだけ血栓症リスクを減らすために禁煙する必要があります。

また、避妊目的だけでなく、月経困難症の治療として低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)を使用している方も、OCと同様に血栓症予防のため禁煙しましょう。

 

 

お母さん・お父さんの喫煙は胎児虐待・児童虐待

妊娠中の喫煙および受動喫煙により、胎児発育不全や流早産・死産・乳児死亡の頻度が高くなることが知られています。さらに、喫煙は、前置胎盤、常位胎盤早期剥離など、胎児だけでなく母体の生命にも関わる重篤な疾患のリスクも高まります。最近の報告によると、児の口唇口蓋裂、先天性心疾患、手足の欠損、腹壁破裂の発生率が増加し、神経発達障害を引き起こす可能性もあるとのことです。

また、お産後のお母さん、同居しているお父さんや家族の喫煙により、子供は受動喫煙にさらされ、その結果、乳幼児突然死症候群のリスクが大きく増加します。したがって、お母さんが妊娠したら、お父さんをはじめご家族皆さんが禁煙されることを強くお勧めします。

 

 

中高年女性の喫煙は破滅行為

喫煙女性は非喫煙女性と比較して閉経が早いことが知られており、喫煙は血管運動神経症状、抑うつ症状、不眠など更年期障害のリスク因子といわれています。さらに、更年期障害の治療としてホルモン補充療法(HRT)を行なった場合でも、喫煙はHRTの後下を減弱させ、血栓症のリスクを増大させるといわれています。

また、エストロゲンは骨密度を増加・維持するために大変重要なホルモンですが、喫煙にはエストロゲンの効果を弱める作用があることが知られています。それに加えて、喫煙は腸管でのカルシウム吸収を抑制し、尿中での排泄を促進するため、骨粗しょう症になりやすく骨折のリスクが高まります。

さらに、閉経後は血中エストロゲン濃度の減少に伴い、一般的に動脈硬化のリスクが高くなりますが、その上タバコを吸い続けていれば、心筋梗塞や脳卒中など重篤な疾患になってしまう可能性が一段と高まります。

 

 

思春期はもちろん、性成熟期から更年期・老年期にかけて、喫煙は百害あって一利なしです。
新型コロナウイルス感染症拡大で、ストレスの多い生活が続きますが、決して喫煙はストレス解消にはなりません。
これを機に、タバコに変わるご自身に合ったストレス解消法を探してみてはいかがでしょうか。