院長コラム

妊娠中、まわりで「りんご病」が流行し始めたら

上のお子さんをお持ちの妊婦さんは、幼稚園・保育園や小学校など、その子の周りでりんご病が流行し始めたら、上のお子さんだけでなく、ご自身への感染や胎児への影響をご心配されると思います。
今回は妊婦さんとりんご病についてお話致します。

 

 

りんご病とは

りんご病とは、左右の頬が赤く盛り上がる独特な発疹(紅斑)を認める感染症です。
原因はパルボウイルスB19というウイルスの飛沫感染で、冬から初夏にかけて流行し、主に4~10歳の児童に多くみられます。

 

 

りんご病の症状:小児の場合

ウイルス感染から発熱・倦怠感などの前駆症状がみられるまでの潜伏期間は6~11日であり、最も人に感染しやすい時期です。

頬の紅斑がみられるまで、つまりりんご病かも知れないと気付くまでは、感染から16~20日もかかります。実は、その頃にはもう人に感染することはほとんどありません。

つまり、上のお子さんなど、ご家族の方がりんご病に感染したかも知れないと考え、医療施設を受診し、りんご病であると診断された時には、もう既に周りの方々にも感染している可能性が高いということになります。

 

 

りんご病の症状:成人の場合

成人の場合は感染しても約半数は症状が出ず(不顕性感染)、症状が出たとしても、発熱や関節痛などあまり特徴的なものはありません。

治療法はありませんが、あまり重篤にはならず、自然に治る感染症ですので通常はあまり心配いりません。

ただし、今までパルボウイルスに感染したことがなく、抗体を持たない妊婦さんにとっては、充分に注意しなければならない感染症です。

 

 

 

妊婦さんが初めて感染すると

このウイルスは胎盤を経由して胎児に感染します。そして、胎児の赤血球産生を停止させ、胎児を貧血にさせます。その結果、胎児全体がむくみ(胎児水腫)、胎児死亡に至ることもあります。

胎児に影響を及ぼす時期は、ほとんど妊娠20週未満に感染した場合であり、特に妊娠9~16週の感染が危険です。もし母体が妊娠20週未満に感染していた場合、胎児も感染している確率は約20~30%、流産や胎児死亡に至る確率は約10%といわれています。

 

 

母体・胎児のウイルス感染の検査

母体が感染しているかは、血液検査でパルボウイルス抗体の有無などを調べて診断します。

もし、胎児感染の可能性があれば頻回に超音波検査を行い、胎児水腫の有無を確認します。もし、胎児水腫の増悪や重症貧血が疑われるときには、胎児輸血といった胎児治療や分娩後の新生児治療が可能な高次施設へ紹介致します。

 

 

ご家庭で気を付けること

妊娠初期の妊婦さんがいらっしゃるご家庭では、流行期には家族全員が手洗いを励行し、できるだけ感染しないようにする事が大切です。

また、幼稚園・保育園や小学校でりんご病がはやり始めたら、一時的に上のお子さんを休ませた方がいいかも知れません。

 

 

 

残念ながらパルボウイルスのワクチンは未だ開発されておらず、手洗いぐらいしか予防方法もありません。
流行期にはできるだけ人ごみを避けるなどして、身を守りましょう。