院長コラム

分娩誘発時の「ミニメトロ」の使用について

予定日超過などに対する分娩誘発の方法として、子宮頚管を熟化させる方法と子宮収縮薬を投与する方法があります。
もし、子宮頚管が未熟であれば、まずは頸管を熟化させることが必要です。
「ミニメトロ」はシリコーンゴム製の特殊な“水風船”で、頸管熟化させる器材の一種です。
今回は当院での「ミニメトロ」使用方法について説明します。

 

ミニメトロ挿入

当院では通常、分娩誘発の日は朝7時にご来院頂きます。
まず、経腹超音波検査で胎児の計測や羊水量の評価を行い、内診および経腟超音波検査で子宮口の熟化具合や臍帯下垂・脱出のないことを確認します。
その後ミニメトロを頸管にゆっくり挿入し、約40mlの滅菌水で水風船を膨らまし、内子宮の位置に留置します。その際、一時的に多少痛みを伴う場合があるかもしれません。
ミニメトロ留置後、超音波検査で臍帯下垂・脱出がなく、胎児心拍に異常ないことを確認して終了です。
その後、分娩終了または分娩誘発中断まで分娩監視装置を連続して装着します。

 

ミニメトロ留置中

ミニメトロの刺激だけでも頸管熟化や子宮収縮がみられることがありますが、多くの場合、他の陣痛促進剤を併用します。
ミニメトロ挿入後1時間経過し、分娩監視装置にて子宮収縮が弱く、胎児心拍に異常がなければ、「PGE2錠」の服用を併用することがあります。PGE2錠は1時間ごと1錠ずつ(最大6錠/日まで)服用する促進剤で、子宮収縮作用だけでなく頸管熟化作用もあります。
もし、1日6錠まで服用しても陣痛が始まらない時には、子宮収縮を促す「オキシトシン注」の点滴に切り替えることがあります。
尚、夕方になってもミニメトロが自然に脱出しない場合は、滅菌水を抜いて抜去し、翌朝改めて挿入することがあります。

 

ミニメトロ脱出後

ミニメトロが自然脱出すると、非常にまれですが、臍帯が下垂・脱出してしまう可能性があります。
もし、ミニメトロが明らかに脱出した自覚がある時には、内診して臍帯下垂・脱出の有無を確認します。
ミニメトロの自然脱出後は、子宮口が3~4cm以上開大していることがあり、引き続き陣発することも少なくありません。
もし、陣痛が微弱であれば「オキシトシン注」にて子宮収縮を促すようにします。

 

ミニメトロは子宮頸管の熟化に大変有用ですが、臍帯下垂・脱出のリスクに注意が必要です。
特に、羊水過多症の場合はそのリスクが高まります。
ミニメトロ使用の適応を守り、留置中、脱出後も胎児の状態に十分注意して参ります。