院長コラム

“やせ”や低栄養による身体症状と検査所見

過激なダイエットやスポーツなどが原因で、“やせ”や低栄養となってしまう女性は少なくありません。
体重(㎏)÷身長(m)÷身長(÷)の値をBMIといい、18.5未満を“やせ”と評価します。
今回は、「クリニックで診る摂食障害」(医学書院)などを参考に、“やせ”や低栄養による身体症状と検査所見について説明します。

 

  • 尿ケトン体陽性

あまり食事をとらず、急激に体重が減少すると、尿検査でケトン体が陽性になります。
栄養摂取が少ないと、自分の脂肪をエネルギー源として燃やしますが、その際生じるのが尿ケトン体です。
つまり、尿ケトンが陽性であるということは、栄養摂取不足であることを意味します。

 

  • 皮膚の異常

低栄養になると、皮膚がたるみ、しわが増加し、頭髪の脱毛がみられます。

 

  • 消化管の異常

胃腸の粘膜が萎縮し、消化管の蠕動運動が低下することで、嘔気や嘔吐、便秘、腹痛、腹部膨満感がみられます。

 

  • 無月経

低栄養になると、脳の視床下部から分泌されるホルモンが低下し、卵巣にある卵胞(卵子が入っている袋)が発育せず、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下します。
その結果、無排卵、無月経となり、骨粗しょう症を引き起こす可能性もあります。

 

  • 疲労感

低栄養になると貧血、鉄欠乏、葉酸やビタミンB12の低下、白血球減少などがみられることがあります。
また、肝機能障害をきたし、AST、ALTという肝酵素の上昇がみられることが知られています。
その結果、疲労感を認めることが少なくありません。

 

  • 不整脈、徐脈

極端なダイエットにより低カリウム血症になると、心電図異常や不整脈をきたすことがあり、突然死の原因となるような不整脈を生じる可能性もあります。

 

  • 脂質代謝異常

コレステロールの胆汁への排泄低下やコレステロール代謝回転の低下などにより、血中コレステロール値が上昇することが知られています。

 

その他、睡眠障害や認知障害、集中力の低下など、日常生活に支障をきたす様々なトラブルが発生します。
ダイエット中の方や激しいスポーツをされている方で、上記の自覚症状や健診結果が認められた場合、まずは内科、無月経があれば婦人科を受診しましょう。