院長コラム

妊婦さんの頭痛に対する薬物療法

妊娠中、頭痛に悩まされる方は少なくありません。
妊娠高血圧症候群や脳出血など、重篤な疾患が疑われる場合は緊急の対応が必要です。
しかし、重篤な疾患がない場合であっても、日常生活に支障をきたす程の頭痛があれば、我慢しないで積極的な薬物療法を行うことが望ましいと考えます。
今回は、当院で行っている妊婦さんの頭痛に対する薬物療法について説明します。

 

第一選択は「カロナール錠」(アセトアミノフェン)

一般的に鎮痛剤として広く用いられている非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)は、妊娠後期に服用すると胎児の心血管系に悪影響を及ぼす可能性があります。
そのため、比較的安全に服用できる「カロナール錠」(アセトアミノフェン)が、妊婦さんに用いる鎮痛剤の第一選択となります。
ただし、鎮痛効果はやや低い印象があり、1回1錠、1日3回で始め、効果が弱い場合は1回2錠まで増量しています。
尚、「カロナール錠」といえども、必要最小限の服用にとどめることが大切で、特に妊娠28週以降はより注意して使用しています。

 

効果が弱い場合は「ロキソニン錠」の頓服(妊娠28週未満)

妊娠末期は禁忌である「ロキソニン錠」も、妊娠中期までであれば有益性投与とされています。
妊婦さんに対して長期に使用することは避けるべきですが、カロナール錠を増量しても改善しない頭痛に対して、妊娠28週未満であればロキソニン錠1錠を頭痛時に頓服することは可能と考えます。
ただし、あくまでも緊急避難的な処方であり、当院では「ロキソニン錠」の妊婦さんへの使用は数えるほどしかありません。

 

連続使用なら漢方薬「呉茱萸湯(ゴシュユトウ)」

慢性頭痛に効果がある「呉茱萸湯」は、副作用も少なく妊婦さんに使用しやすい漢方薬です。特に首や肩のこり、嘔吐などを伴う場合に有用の様です。
また、呉茱萸湯は頓服よりも定時内服の方が効果を発揮しやすいといわれているため、1回1包、1日3回、1~2週間の服用で効果を判定しています。

 

妊婦さんの頭痛に対して、当院ではカロナールを第一選択とし、長引く場合には呉茱萸湯を連続服用、そして頭痛増強時にはロキソニンの頓服で対応しています。
それでも頭痛が改善しない場合は、近隣の頭痛専門医へ紹介させて頂いております。
頭痛がつらい妊婦さんは、我慢せずに我々スタッフにお伝え下さい。