院長コラム

令和3年5月 世田谷区ではHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の“事実上”勧奨へ

令和2年10月、これまでHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの積極的な接種勧奨を控えていた国は、区市町村に向けて「定期接種対象者および保護者に対して、定期接種の検討・判断するための情報提供に取り組むこと」を勧告しました。
それを受けて、世田谷区でも対象者に情報提供のリーフレットが配布され、その効果もあって最近では接種される方が増加しつつあります。
さらに、「令和3年5月26日に、対象者のうち小学校6年生と高校1年生に相当する女子へリーフレットを再び送付する」との告知が世田谷区よりありました。これは、“事実上のHPVワクチン勧奨”であると、当院ではとらえています。

 

積極的勧奨とは「個別に接種を勧める内容の文書を送付すること」

厚生労働省から医療従事者への通達によると、積極的勧奨とは「個別に接種を勧める内容の文書を送付すること」であり、現時点では一時的に控えている状態です。
ただし、昨年秋、対象者全員に「情報提供リーフレット」が送付されたことは、積極的ではありませんが、“消極的な”勧奨が始まったと考えられます。

 

今回のリーフレットの送付は“事実上”HPVワクチンの勧め

さらに今月、対象者のうち小学校6年生と高校1年生に相当する女子に対してリーフレットを送付するということは、一歩進んだ勧奨と考えられます。
小学校6年生に対しては初めての送付ですが、今年の高校1年生に対しては、昨年既に送付されており、「今年は定期接種の最後の学年であることを忘れないで下さい」との意味合いが込められていると考えられます。

 

新型コロナウイルス感染症拡大に伴う「令和2年延長対応」も

また、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う外出自粛要請などの影響で、令和2年度の定期予防接種の接種開始時期が遅れた方には、延長対応として令和3年度中の接種が可能になりました。
そもそもHPVワクチン接種は“不要不急”ではないため、外出自粛要請の対象ではありません。それにも関わらず、世田谷区が接種延長の対応を行うということは、多くの対象者にHPVワクチン接種を受けて頂きたい、という願いが込められている気がします。

 

感染拡大が止まらない新型コロナウイルス感染の予防も重要ですが、年間約2,800名が亡くなり、約1,200名が妊娠できなくなってしまう子宮頚がんの予防も大切です。
新型コロナワクチン接種が始まり、全国的にワクチン接種の重要性が認識されつつあります。
この機会に、思春期女性やお母様世代の方々には、HPVワクチン接種についても前向きにご検討頂ければと思います。