院長コラム

代表的な性感染症の症状

主に性行為による皮膚粘膜の接触や、精液・頚管粘液・唾液を介して病原体が感染する疾患を性感染症といいます。
中でも日常診療で遭遇することの多いクラミジア・淋菌感染症・性器ヘルペス・尖圭コンジローマそして梅毒について、「STI性感染症アトラス改定第2版」(秀潤社)を基に説明します。

 

 

病原体と潜伏期

5つの性感染症の病原体と潜伏期(感染してから症状が出るまでの期間)をお示しします。

○ クラミジア:クラミジア・トラコマチス 1~3週間

○ 淋菌感染症:淋菌 2~7日

○ 性器ヘルペス:単純ヘルペス(1型・2型) 2~10日

○ 尖圭コンジローマ:ヒトパピローマウイルス(HPV)6型・11型
13週から8ヵ月(平均2.8ヶ月)

○ 梅毒:梅毒トレポネーマ 10~30日

 

 

性感染症の初期症状

クラミジア

無症状のことが多いですが、女性では帯下の増量、下腹部痛がみられることがあります。ちなみに、男性では軽い排尿時痛、尿道分泌がみられるそうです。
また、ある報告によると、性器にクラミジア感染がある女性のうち10.5%の方が咽頭部に、53.3%の方が直腸に感染していました。咽頭感染はコンドームなしのオーラルセックスが考えられますが、直腸感染は肛門性交だけでなく、腟分泌物に含まれたクラミジアが隣接する直腸に到達したことが原因と考えられています。

 

○ 淋菌感染症

感染して2~7日頃、尿道炎のような排尿痛や膿のような帯下が見られることがありますが、約半数には自覚症状はありません。バルトリン腺炎を起こすこともあります。男性の場合は排尿時痛と膿状の白色分泌液が出るそうです。

 

○ 性器ヘルペス

感染後2~7日後に陰部にかゆみや違和感のある水疱が出現します。その後水疱は破れて痛みのある浅い潰瘍(皮膚のえぐれ)をきたし、38度以上に発熱を伴うこともあります。初感染初発型の場合は、再発型に比べて症状が強く、外陰部両側に多発することや、足の付け根の鼠径リンパ節が腫れて痛みを伴うこともあります。

 

○ 尖圭コンジローマ

感染後3週~3ヵ月後、腟入口から肛門までの会陰部や陰唇、肛門付近に乳頭状のイボができます。通常は痛みや痒みはありませんが、多発し増大することがあります。
尚、腟前庭乳頭腫症といって尖圭コンジローマとの鑑別が必要な疾患がありますが、これは性感染症ではなく、治療の必要もありません。

 

○ 梅毒

感染後10~30日で陰唇に硬い無痛性の丘疹が発生し、その後潰瘍となります。鼠径リンパ節も腫れますが、通常痛みはありません。
これらの症状は第1期といわれ、治療しなくても一旦症状はなくなります。もちろん治ったわけではなく、感染6週間~6か月で第2期となり全身に多彩な症状がみられるようになります。

 

性感染症は必ずしも自覚症状があるとは限りません。
外陰部の症状や帯下の様子が気になりましたら早めに受診して下さい。
また、パートナーが泌尿器で性感染症と診断された場合は、ご本人の検査結果が判明する前に治療を開始することもあります。パートナーの検査結果がわかりましたら、是非教えて頂きますようお願い致します。