院長コラム

代表的な性感染症の治療法

近年、インバウンドやSNS普及の影響もあり、代表的な性感染症の感染者は減ることもなく、むしろ最近はクラミジア感染症・淋菌感染症は微増、梅毒に至っては急増しています。今回、代表的な性感染症の治療法について、当院でできる治療を含め、情報共有したいと思います。

  • クラミジア感染症

帯下や尿道痛、軽度の下腹部痛を認める程度の軽症例であれば、当院では、抗菌剤である「ジスロマック錠250㎎」を4錠(1000㎎)1回のみの服用を第一選択としています。
治ったかどうかの判定は、薬物投与開始後3週間以上あけて、帯下を再検し評価します。
その結果、治っていない場合は「クラリス錠200㎎」1回1錠・1日2回7日間の服用に切り替えます。
一方、激しい下腹部痛を伴う重症例には、入院の上「ミノマイシン点滴注射」を3~5日間点滴投与することが必要な場合もあります。その際には、近隣の高次施設へ紹介致します、

  • 淋菌感染症

ほとんどの抗菌剤が効かない事(耐性菌が多い事)が、淋菌の特徴です。
そのため、現時点で耐性菌の報告がほとんどない「ロセフィン静脈用1g」1回1g・1日1回の静脈注射が、第一選択の治療法となっており、当院でも治療可能です。また、口腔性交による咽頭感染にも同じ治療法が有効です。
ただし、クラミジア感染症を合併している場合は、前述の「ジスロマック錠250㎎」などの服薬を併用する必要があります。

  • 性器ヘルペス

性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスというウイルスが原因であるため、抗ウイルス薬の内服が有効です。ただし、ウイルスの増殖を抑えることは期待できますが、残念ながら知覚神経に潜伏しているウイルスを完全に排除することはできません。
治療として、「バルトレックス錠500㎎」1回1錠・1日2回5日間(初発の場合は10日間まで可能)の服用が一般的であり、当院でも第一選択としています。尚、一年間に6回以上再発する方には、再発予防のため「バルトレックス錠500㎎」1回1錠・1日1回1年間(またはそれ以上)服用することが可能です(保険適応)。

  • 尖圭コンジローマ

ヒトパピローマウイルス(6型・11型)の感染が原因ですが、現在完全にウイルスを排除する方法はなく、外科的治療(切除・レーザー治療など)をしても約25%は再発するといわれています。
治療の第一選択は「ベセルナクリーム」1日1回・週3回、就前に塗布して起床後石鹸で洗い流す方法です。ただし、治癒まで平均8週間かかり、しかも100%治癒するとは限らず、原則として最長16週間までしか使用できないという注意点があります。
また、腟内・子宮膣部・肛門内に発生した病変には禁忌となっています。当院では、外陰部の病変に限り、ペセルナクリームによる治療の前後に、尖圭コンジローマ切除術および炭酸ガスレーザー蒸散術を行う事があります。

  • 梅毒

梅毒トレポネーマの感染が原因であり、アレルギーなど特別な理由がない限り、第一選択の治療はペニシリンを用います。幸い、現在に至るまで、ペニシリンに対する梅毒の耐性についての報告はありません。
具体的には、初期の梅毒の場合、「サワシリン錠250㎎」など1回500㎎・1日3回4週間の内服、あるいは「ステルイズ筋注」240万単位の1回筋肉注射(臀部)にて治療します。尚、当院では「サワシリン錠250㎎」を院外処方することが多く、「ステルイズ筋注」は現在取り扱っておりません。

各性感染には治療法は存在しますが、100%治癒することなく再燃を繰り返すものもあるため、できるだけ予防に尽力することが重要です。
妊娠を望まないカップルであれば、男性には適切にコンドームを使用してもらいましょう。

さらに、尖圭コンジローマ予防のため、定期接種世代およびキャッチアップ世代の方は、4価(ガーダシル)または9価(シルガード9月)のHPVワクチン接種を強くお勧め致します。