院長コラム

ホルモン補充療法(HRT)の投与方法

更年期に入り女性ホルモンであるエストロゲンが減少すると、のぼせ、ほてり、いらいら、抑うつなどの更年期障害がみられることがあります。また、閉経後、数年経過すると骨粗しょう症や動脈硬化などのリスクが増加します。
そのため、これらの治療や予防に対して、少なくなったエストロゲンを補充しようとする考えがあります。これをホルモン補充療法(HRT)と言います。
更年期障害や閉経後骨粗鬆症の治療のためには、エストロゲンのみの補充で十分です。
ただし、子宮を有している方にエストロゲン製剤のみ長期間投与を続けると、子宮内膜組織が増殖し、子宮体がんのリスクが高まります。そこで、子宮内膜組織の増殖を抑える作用をもつ、黄体ホルモン製剤を併用することが必要になります。
今回は、当院で行われることが多いHRTの投与方法について説明します。

周期的に出血を起こす投与法
エストロゲン製剤を28日間使用し、後半の14日間は黄体ホルモン製剤を併用する方法です。
エストロゲン製剤と黄体ホルモン製剤を併用して使用した期間の後、エストロゲン製剤のみの期間となります。その際、黄体ホルモンの血中濃度が急激に低下するため、子宮内膜が剥がれて出血します。
このように、あえて周期的に出血を起こさせるこの方法は、当院では、閉経して間もない方や50歳未満の方にお勧めしています。
というのも、閉経からあまり時間がたっていない方の場合、初めから後述の持続投与法を行うと、不規則な出血をきたす場合が少なくないからです。

出血を起こさせない投与法
エストロゲン製剤と黄体ホルモン製剤を併用して持続使用する方法です。
ホルモンの血中濃度の微妙な変化などで不正出血をきたすことがありますが、使用しているうちに多くケースで出血がみられなくなります。
また、周期的投与に比べて持続的投与の方が、子宮体がんのリスクをより抑制するとの報告があり、投与法も簡単なことから、当院では持続的投与法の方が主流になっています。

当院で使用することの多いエストロゲン製剤は内服薬「ジュリナ錠」「エストラジオール錠」、経皮剤「ディビゲル」「ル・エストロジェル」「エストラーナテープ」です。
一方、
黄体ホルモン製剤のほとんどは内服薬「エフメノカプセル」、エストロゲン・黄体ホルモンの合剤のほとんどは経皮剤「メノエイドコンビパッチ」です。
当院では、これらの薬剤を組み合わせて、患者さんお一人おひとりに適した投与法を行っております。