院長コラム

分娩時の会陰切開について

腟入口部の下端から肛門の間を会陰といい、分娩時の裂傷を予防するため会陰を切開することがあります。
今回は、当院での会陰切開について説明します。

 

 

会陰切開とは

分娩に伴う腟壁、外陰部、会陰部などの裂傷(産道裂傷)を予防するため、あるいは赤ちゃんが苦しくなり、分娩時間を短縮するため、分娩前にあらかじめ会陰を切開することを会陰切開といいます。

助産師が適切に会陰保護を行っていても、産道裂傷を完全に防ぐことはできません。

そのため、母児の状況を見ながら、「会陰切開を入れるか入れないか」、「入れるとすれば場所と大きさはどうするか」などを判断します。

 

 

会陰切開を行う主なケース

① 会陰部の伸展が不十分で、複雑または大きな産道裂傷の発生が予想される場合

② 胎児の状況が良好ではなく、できるだけ胎児にストレスを与えず、速やかに娩出したい場合

③ 母児の状況で、吸引分娩を行う場合

④ 胎児が比較的大きく、難産が予想される場合

 

 

会陰切開の方法

通常は排臨から発露の時点で会陰部に局所麻酔の注射を打ちます。

分娩直前、はさみで会陰部に切開を入れますが、正中切開(腟入口部下端から肛門の方向へ切開)と正中側切開(腟入口部下端から左斜め下へ切開)の二つの方法があります。

会陰部が比較的広い・胎児もあまり大きくない・大きな裂傷の可能性が少ない・経産婦さんなどの場合は、正中切開を入れることが多いです。

会陰部が狭い・胎児が大きめ・会陰部の伸展が悪く、裂傷が大きくなる可能性がある・吸引分娩・初産婦さんなどは、正中側切開を選択します。

正中側切開の方が正中切開より切開創が大きい分、出血が多く、術後の疼痛が強い傾向がありますが、産後の母体の回復に影響を及ぼすほどのものではありません。

 

 

縫合方法

胎盤が娩出した後、会陰切開日をはじめ、産道裂傷を確認し、吸収糸で縫合します。抜糸の必要のない糸で縫合していますが、退院診察の歳、疼痛が強ければ表面の糸を抜糸します。

 

 

会陰切開をしたくない、とご希望される方に対しては、できる限り尊重致します。ただし、母児の安全にとって必要であると判断した場合には、会陰切開を入れさせて頂く旨、何卒ご了承下さい。