院長コラム

ホルモン補充療法(HRT)によるマイナートラブル対策

更年期障害や閉経後骨粗しょう症に対し、減少したエストロゲン(女性ホルモン)を補うHRTは大変有用です。
ただし、様々なマイナートラブルが認められることもあります。
今回は、「女性更年期外来診療マニュアルTDCメソッド」を参考に、HRTによるマイナートラブル対策について説明します。

 

体重増加

HRTを始めて体重が増えた、との声を聴くことがあります。
ただし、HRTと体重の関連を検討した研究では、HRTによる体重増加に関して否定的な報告が多いようです。
そもそも、閉経前後の女性の場合、HRTの有無にかかわらず、代謝の変化により体重が増加しやすいことが知られています。
また、HRTで体調がよくなり食欲がアップした、とも考えられます。
いずれにせよ、HRTを始めるご年齢の方は、食生活と運動習慣を見直すことも大切と思われます。

 

不正性器出血

子宮を有している女性に対してHRTを行う場合、ストロゲン製剤を単独に使用すると、子宮内膜が肥厚し、子宮体がんのリスクが高まります。
そこで、子宮内膜の増殖をおさえるため黄体ホルモン製剤を併用することが必要になります。
子宮体がん予防の観点から、最も望ましいHRT施行方法は、エストロゲン製剤と黄体ホルモン製剤を持続的に使用することです(持続的併用投与法)。
ただし、閉経後間もない方が最初から持続的に使用すると、予期しない時に連続的・断続的に出血してしまうことも少なくありません。
そこで、エストロゲン製剤は持続的に使用し、黄体ホルモン製剤は周期的に使用することで、一定の間隔で少量の出血を故意に起こさせることがあります(周期的併用投与法)。
一方、閉経後時間がたっている女性に対しては、エストロゲン製剤の量を減らす事で子宮内膜を薄くし、出血のリスクを低下させることが期待できます。

 

皮膚炎

貼付剤(メノエイドコンビパッチ、エストラーナテープ)を用いた際、発赤やかゆみといった皮膚症状がみられることがあります。
これは接触皮膚炎と考えられ、貼る場所を毎回変えるなどの対応が必要であり、場合によっては軟膏などを使用します。
また、同じ経皮剤でもゲル剤の方が皮膚に対する刺激が少ないといわれているため、ディビゲル、ル・エストロジェルへの変更、あるいは経皮剤から内服薬への切り替えを検討します。

 

HRTは非常に有用な治療法です。
マイナートラブルのために継続できなくなってしまうのは、とても勿体ない事です。HRT継続のため、様々な工夫をこらし、お一人おひとりの悩みを解消していきたいと考えています。