院長コラム

つわりに対する漢方療法

つわり、妊娠悪阻は50~80%の妊婦さんにみられ、ホルモン環境や心理的ストレスなどが原因と言われています。
治療法としては、脱水が強い場合は点滴療法を行い、水分、電解質、ビタミンなどを投与します。
そこまで症状が強くない場合は、胎児への影響を考慮して漢方薬を使用することが少なくありません。
今回は、「産科と婦人科 産婦人科漢方ステップアップ」(2023年1月号)を参考に、当院でも処方している漢方薬について説明致します。

 

第一選択薬は「小半夏加茯苓湯(ショウハンゲカブクリョウトウ)」

“つわりの漢方薬”として知られているのが小半夏加茯苓湯です。
約65%に有効ともいわれており、当院でもつわりに対する漢方薬として、最も多く処方しています。

 

抑うつ感があれば「半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)」

半夏厚朴湯は消化器症状だけでなく、抑うつといった精神的な症状にも有効な漢方薬です。
特に、のどの“つまり感・異物感”がみられる方には第一選択で処方しています。

 

胃腸の冷えがあれば「人参湯(ニンジントウ)」

人参湯はお腹を温めて、胃腸機能を整える作用があるため、腹部の冷えが強い方に用います。
また、唾液の分泌が多い方に有用のようです。

 

下痢・頭痛・口喝あれば「五苓散(ゴレイサン)」

五苓散は体の水分の滞りを改善することで、その効果を発揮します。
下痢、頭痛、口喝、むくみ、尿量減少がみられる方に処方することが多い漢方薬です。

 

胃もたれ・食欲不振あれば「六君子湯(リックンシトウ)」

六君子湯は代表的な“漢方の胃薬”で、嘔気・嘔吐に対する効果が強い漢方薬です。
特に、食欲不振、体重減少の方に有用のようです。

 

嘔気が強いため、漢方薬をそのまま服用できない方もいらっしゃいます。
そのような場合は60℃くらいの白湯に溶かし、そのままあるいは冷やした状態で少しずつ飲むか、凍らせてお召し上がり下さい。
一気に全部飲もうとせず、少しずつ服用することが、服薬の継続に繋がります。