院長コラム

ホルモン補充療法ができない方、抵抗がある方にサプリメント「エクオール」という選択

大豆には、女性ホルモン(エストロゲン)様の成分である「イソフラボン」が含まれていることが知られています。大豆を食べると、イソフラボンが腸内細菌の働きで「エクオール」という成分に変わり、全身に様々な働きかけをします。
今回は、「NPO法人 女性の健康とメノポーズ協会」の冊子などを参考に、エクオールの使い方について情報を共有します。

 

 

エクオールの作用(1)エストロゲン作用

更年期や卵巣摘出術などで卵巣から分泌されるエストロゲンが減少すると、更年期障害や骨量低下、皮膚の乾燥など、多くの不快な症状をきたす事があります。日常生活に支障きたすような症状がある場合には、ホルモン補充療法(HRT)を行なうことが一般的ですが、血栓症の既往がある方など、HRTが禁忌である方も少なくありません。また、いきなりホルモン剤の投与に抵抗感を示される方もいらっしゃいます。

その様な方々には、サプリメントである「エクオール」は非常に有用です。エクオールにおけるエストロゲンの強さは、HRTの1/1000~1/2000程度であり、重篤な副作用はほとんどありません。それでいて、全身のエストロゲンが足りない時には、様々な組織にあるエストロゲンの受け皿(受容体)にエクオールが結合し、エストロゲンに似た働きをします。

エクオールを3か月以上服用することで、更年期症状であるホットフラッシュや発汗、首・肩のこりなど、多くの症状が緩和するとの報告があります。また、閉経後女性が1年間エクオールの摂取したところ、服用していない女性と比べて、骨密度の減少率が約半分に抑えられたとの報告もあります。

しかし、エクオールはあくまでもサプリメントであり、副作用が少ない代わりに速効性はなく、効果を判定するには約3か月以上の服用が必要です。

 

 

エクオールの作用(2)抗エストロゲン作用

身体にエストロゲンが大量にある場合は、エストロゲンの過剰な働きを抑えるため、エクオールはエストロゲン受容体にはまり込み、抗エストロゲン作用という働きをします。特に乳腺組織はエストロゲン受容体が豊富です。もし乳がんが存在している場合、エストロゲンの作用が強くなると、がん細胞を増殖させてしまう可能性があります。

エクオールはエストロゲン受容体に先回りして結合するため、エストロゲンの作用を弱めることが知られています。また、ある研究では、大豆・豆腐・納豆などをたくさん食べる人ほど乳がんになりにくい、といった報告もあります。つまり、エクオールの摂取が乳がん予防に繋がることも期待できます。

尚、乳がん治療後の内分泌療法により、ホットフラッシュや発汗などの更年期障害をきたす方は少なくありません。しかし、HRTは乳がん再発の可能性があるため禁忌であり、この場合は使用できません。一方、エクオールの場合、適切な摂取量を守っていれば、理論上乳がんの再発に影響を与えることはありません。したがって、副作用対策としてエクオールを服用することは問題ないと考えられます。ただし、現時点ではエクオールの使用に関して、乳腺科の先生の間でも様々な意見があり、必ずしもコンセンサスが得られてはいないようです。

ちなみに当院としては、乳がん治療後の内分泌療法中の更年期障害に対し、まずはご本人と相談の上、各種漢方薬、メルスモン注射、自律神経調整薬を用います。それでも症状が改善されず、日常生活や乳がん治療に支障きたすと思われる場合には、エクオールの使用を提案しますが、最終的には主治医である乳腺科の先生の方針に従うようにしています。

 

 

更年期障害にHRTを用いることは、骨粗しょう症や動脈硬化の予防も期待できるため、もっと多くの女性にHRTをお勧めしたいと思っています。
しかし、HRTが禁忌の方やホルモン剤に抵抗がある方には、サプリメント「エクオール」という選択枝があることをお伝えしたいと思います。
中高年女性の方は、是非、前向きにご検討下さい。
尚、当院では「エクエル」(税込4,320円/箱)を取り扱っております。ご希望の方は受付にお声掛け下さい。