院長コラム

当院における「子宮内膜ポリープ」の患者さんへの対応について

子宮内膜ポリープは性成熟期から閉経前後の女性にみられることが多く、不正出血の原因となることがありますが、無症状で経過し、偶然に超音波検査などで発見されることも少なくありません。
今回は「女性医学ガイドブック 思春期・性成熟期編 2016年度版」(日本女性医学学会編)を参考に、子宮内膜ポリープの概略について説明し、当院における「子宮内膜ポリープ」の患者さんへの対応についてもお伝えします。

 

 

子宮内膜ポリープとは

子宮内膜ポリープは、子宮内膜腺や血管を中心とした数mmから数cmのイボで、単発性のものや多発性のものがあります。

子宮内膜ポリープには、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の受け皿があり、正常な子宮内膜組織と同様に、エストロゲンが作用すると増殖し、プロゲステロンが作用すると増殖が抑制されます。

ほとんどは良性ですが、病理学的検査で0.8~8%に悪性所見を認めることがあるといわれています。

 

 

子宮内膜ポリープの悪性リスク因子

乳がん術後のホルモン療法として広く使用されている「タモキシフェン」は子宮内膜を増殖させる働きがあります。ある報告では、タモシシフェン投与中の閉経後女性の8~36%に子宮内膜ポリープが認められ、3~11%に悪性所見が認められました。

また、閉経女性は未閉経女性と比べて、子宮内膜ポリープが悪性であるリスクが3倍ほど高く、不正出血がある女性では不正出血がない女性と比べて、悪性のリスクが約2倍高くなります。

ポリープの大きさに注目すると、直径18mmを超える内膜ポリープは悪性のリスクが高くなるといわれているため、注意が必要です。

 

 

子宮内膜ポリープの診断と治療

通常、経腟超音波検査で診断します。月経終了後から排卵までの時期では子宮内膜ポリープが比較的明瞭に見えますが、排卵から月経までの時期では不明瞭なことがあるため、時期をずらして再検することもあります。

施設によっては、子宮鏡を用いて子宮内膜を観察し、子宮鏡下で内膜ポリープを切除しています。明確な手術適応の基準はありませんが、①不正出血を認める場合、②ポリープ径は1cm以上、③多発性ポリープ、④不妊症の原因となる場合、⑤悪性が疑われる場合、などは子宮内膜ポリープ切除術が勧められているようです。

 

 

当院での対応

当院には子宮鏡がないため、子宮内膜細胞診または組織診を行い、子宮内膜がんまたは前がん病変の有無を確認します。もし、子宮内膜がん、あるいは前がん病変の可能性がある場合には、「東京医療センター」、「東邦大学医療センター大橋病院」など、高度な婦人科腫瘍の治療が可能な高次施設へ紹介しています。

悪性所見はみられないものの、不正出血を認める場合や1cmを超えるポリープの場合で、すぐには妊娠を考えていない方であれば、「こまざわレディースクリニック」へ紹介することがあります。

挙児希望の方で、不妊検査も希望されている場合には、子宮鏡検査が可能な不妊専門施設へ紹介致します。

 

 

人間ドックなどで子宮内膜ポリープを指摘され、精査・治療目的で当院を受診された場合、出血がなく、単発で1cm未満の大きさであり、現在挙児希望がなければ、当院にて経過観察致します。
もし、不正出血や増大傾向が認められれば、他施設へ紹介致します旨、ご了承下さい。