院長コラム

ヒトパピローマウイルス(HPV)9価ワクチン 「シルガード9」について

子宮頚がんの原因として、発がん性の高いハイリスク型HPVの持続感染が知られています。
HPVには約200種類以上の型がありますが、そのうち約14種類がハイリスク型に分類されており、特に「16型」「18型」の発がん性が高いといわれています。
また、尖圭コンジローマという良性の性感染症も、「6型」「11型」というローリスク型のHPVが原因となっています。
今回は、これらのHPV感染を予防するHPVワクチン、特に令和3年2月に発売されたHPV9価ワクチン「シルガード9」について情報提供致します

 

HPV4価ワクチン「ガーダシル」とHPV9価ワクチン「シルガード9」の違い

「ガーダシル」は尖圭コンジローマの原因となるローリスク型「6型」「11型」に加えて、日本人の子宮頚がん原因の65%を占めるハイリスク型「16型」「18型」の4つの型に対応しています。
また、実際には「16型」「18型」以外のハイリスク型についても多少予防効果が期待できるため、「ガーダシル」を接種することで、子宮頚がんのリスクを約70%軽減できると考えられています。
一方、「シルガード9」は、「ガーダシル」が対応可能な4つの型に、ハイリスク型「31型」「33型」「45型」「52型」「58型」の5つの型が加わり、合計9つの型に対応できます。
9つの型の内、ハイリスクの7つの型は、日本人の子宮頸がん原因の88%以上を占めているため、臨床的には「シルガード9」を接種すると子宮頚がんのリスクを約90%軽減させることが期待できます。

 

「シルガード9」の接種スケジュールと費用

「シルガード9」の接種対象者は、9歳以上の女性で合計3回、筋肉内に注射します。
初回接種の後、2か月後に2回目、初回接種から6か月後に3回目を接種します。
尚、「ガーダシル」は定期接種(小学6年生相当~高校1年生相当)に指定されており、無料で接種することができますが、「シルガード9」は指定されていないため全額自費となります。
施設によって費用は異なりますが、当院では初診の方の場合、3回接種で10,7800円(税込)と設定しております。

 

10月1日に開かれた厚生労働省の予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会で、HPVワクチンについても検討されたそうです。
HPVワクチン定期接種に関しては、8年以上も積極的勧奨を差し控えられてきましたが、ようやく“差し控え”が解除されるかもしれません。
できれば早めに、定期接種対象者は「ガーダシル」を、それ以外の方(特に有効性が高い26歳までの女性)は自費で「ガーダシル」または「シルガード9」の接種をご検討下さい。