院長コラム

閉経前後のホルモン変化と症状

閉経前後(中央値50.5歳)の時期では、卵巣機能が次第に低下し、月経周期の短縮や延長を経て、無月経に向かっていきます。このような月経状況の変化に影響を及ぼしているのは各種ホルモンです。
今回は、「日本女性医学学会ニューズレター2021年Vol.27」などを参考に、閉経前後のホルモン変化について説明します。

 

生殖期後期

卵胞(卵子を入れている袋)の数は加齢とともに減少し、38歳ごろより妊娠しづらくなっていきます。
卵胞から分泌する「インヒビン」は脳の下垂体から分泌される「卵胞刺激ホルモン(FSH)」の合成や分泌を抑制します。卵胞数の減少により、このインヒビンも減少し、反対にFSHが次第に上昇します。
FSHは卵胞発育を促す作用があるため、早期に排卵させようとして月経周期が短くなることがあり、約42歳で最短になるといわれています。

 

閉経移行期

閉経の7年前頃からFSHの上昇は加速し、月経周期が延長し始めます。
卵胞から分泌される女性ホルモン「エストロゲン」は減少し始めますが、徐々に減少する方、一度増加してから減少に転じる方など、様々なパターンがあるそうです。
尚、この時期は無排卵の月経が増加してきますが、たまに排卵することがあるため、意図しない妊娠に注意が必要です。
閉経前1~3年になると、FSHは急上昇、エストロゲンは急降下し、月経周期が2か月以上延長してきます。この頃、のぼせ・ほてり・発汗など血管運動神経症状という更年期症状がみられるようになってきます。つまり、閉経前から更年期障害をきたすようになります。

 

閉経後早期

閉経後、つまり人生最後の月経から5~8年間を閉経後早期といい、特に最初の2年間は典型的な更年期症状が最も認められる時期です。
閉経から3年以上経過すると、FSHは高値安定、エストロゲンは低値安定となり、更年期症状も軽快していきます。
閉経後8年以上経過すると、加齢による影響もあり、生殖泌尿器の萎縮症状などが増えてきます。

 

通常、「12か月間以上の無月経」をもって閉経と判定しており、ホルモン検査では「FSH値40mIU/ml以上かつエストラジオール値20pg/ml以下」を基準とされています。
ただし、各種ホルモンの変動、月経周期の変化、更年期症状の現れ方などは個人差が大きいため、個々に合わせた診断や治療が必要です。
当院では、更年期女性の方々が快適に日々をお過ごし頂けるよう、ホルモン補充療法や漢方療法などを中心とした更年期医療に力を入れて参ります。