院長コラム

自然閉経と外科的閉経の更年期症状の違い

自然閉経の場合、閉経期(45歳から55歳前後)の卵巣機能低下に伴い、女性ホルモンのエストロゲン分泌量は徐々に減少し、様々な更年期症状を認めるようになります。
一方、自然閉経前に両側卵巣を摘出した場合は
突然閉経状態となるため、自然閉経の方よりも更年期症状が強く表れる傾向にあります。
今回は、今年度の日本産科婦人科学会学術講演会のセミナーを参考に、自然閉経と外科的閉経の更年期症状の違いについて説明します。

 

自然閉経の更年期症状の頻度

ある報告によると、自然閉経の上位10個の更年期症状は以下のようになっています。

1.易疲労感(身体)2.肩こり(身体)3.物忘れ(精神)4.神経質(精神)5.イライラ感(精神)6.くよくよ(精神)7.発汗(身体)8.冷え(身体)9.不安(精神)10抑うつ(精神)

*(身体):身体的症状  (精神):精神的症状

自然閉経の場合、易疲労感・肩こりといった身体的症状と、神経質・イライラ感といった精神症状が4:6の割合となっており、やや精神症状が多い傾向にあります

 

外科的閉経の更年期症状の頻度

一方、外科的閉経の更年期症状上位10個は、以下の通りです。

1.肩こり(身体)2. 発汗(身体)3.ホットフラッシュ(身体)4. 易疲労感(身体)5.物忘れ(精神)6.腰痛(身体)7.頭痛(身体)8.関節痛(身体)9.意欲の欠如(精神)10動悸(身体)

自然閉経と異なり、外科的閉経の場合は身体的症状と精神的症状の割合が8:2であり、圧倒的に身体的症状が多くなっています。特に、肩こり、発汗、ホットフラッシュが多いのが特徴的です。

 

外科的閉経の方は早期のホルモン補充療法を

エストロゲンの低下が主因である更年期障害に対して、エストロゲン製剤を投与するホルモン補充療法(HRT)は標準的な治療になります。
HRTは更年期症状全般に有効ですが、特に発汗やホットフラッシュといった血管運動神経症状と呼ばれる身体症状に効果的です。精神的症状に対しては、漢方薬や向精神薬の方が有効なケースがあります。
そのため、血管運動神経症状が出やすい外科的閉経の方は、なるべく早期からHRTを検討されることをお勧めします。
一方、自然閉経で精神的症状が強い場合、HRTの効果が不十分であれば、漢方薬や向精神薬の併用を検討してもいいでしょう。

 

更年期症状はエストロゲン低下だけでなく、社会的な環境や心理的因子など、様々な要因が絡み合って出現します。
外科的閉経の方の場合も、急激なエストロゲン低下に加えて、原疾患の再発や術後の生活に対する不安などが影響します。
HRT施行の可否も含め、術後の更年期症状の管理については、主治医とよくご相談下さい。