院長コラム

はしか(麻疹)流行中!抗体のない妊婦さんは要注意!!

現在、関西地区を中心に麻疹患者さんが急増しており、東京、神奈川、埼玉でも感染者が報告されています。過去10年で最多であった2009年の感染者数を上回るとも言われており、全国への感染拡大が危惧されています。
特に、抗体を持たない妊婦さんが感染してしまうと、母児に様々な悪影響を及ぼします
風疹感染に気を付ける方は増えてきましたが、麻疹感染の危険性を理解している方はあまり多くはないようです。
今回は妊娠に与える麻疹の影響と予防について説明します。

 

 

麻疹について

麻疹ウイルスの感染経路は空気感染、飛沫感染、接触感染、そして経胎盤感染と様々です。感染力が極めて強く、不顕性感染(感染しても症状が出ない状態)は少ないと言われています。

潜伏期間は10日前後で、感染して7日目頃から、つまり症状が出る前から感染の可能性があります。発熱、全身倦怠感、食欲低下、カタル症状(咳、鼻汁、結膜充血)が現れ、両側頬の粘膜の1㎜程度の白色小斑点が見られる時期(カタル期)が最も感染力が高く、その後は高熱をきたし、全身に発疹が広がる発疹期に移ります。症状が現れて7~10日後には解熱し、全身状態も回復し、発疹も色素沈着して回復期となりますが、この時期まで感染力は継続します。

 

 

妊娠に与える影響

妊婦さんの麻疹抗体陰性の割合は約10%と言われており、もし妊娠中に初感染してしまうと、妊婦さん自身が肺炎など重篤な合併症をきたし、重症化して死亡に至るケースもありす。

また、妊娠初期に感染しても風疹と異なり、催奇形性は否定されていますが、30~40%に流早産が起こり、子宮内胎児死亡も報告されています。

麻疹感染してしまった妊婦さんが、発赤出現6日以内に分娩となった場合、新生児に症状がなければ、新生児麻疹の予防のためにグロブリン(免疫の薬剤)を投与した上で、母親の感染力がなくなるまで母児分離で管理します。

麻疹ウイルスは胎盤を介して胎児に感染するため、出生後10日以内に発疹が出現した場合は先天性麻疹と診断されます。通常は軽症であることが多いですが、早産時では死亡例の報告もあることから、早産児の管理は特に注意が必要です、

 

 

麻疹の予防はワクチン接種と人混みを避けること

麻疹の予防はワクチン接種しかありません。ただし、生ワクチンでありため妊娠中に接種することができませんので、妊娠する前に接種する必要があります。尚、麻疹風疹ワクチン(MRワクチン)を接種した場合、2か月間は避妊するようにしましょう。

麻疹抗体を持たない妊婦さんは、妊娠中の海外旅行(特に流行している東南アジアなど)は控えましょう。できれば空港にも近づかないことをお勧めします。もちろん、国内での最新の流行地(2019年2月の時点では大阪・三重・愛知など)も確認し、里帰り分娩のために帰省する以外の旅行は避けましょう。また、麻疹流行地以外のエリアを旅行する場合であっても、飛行機、新幹線など公共交通機関を利用しないようにしましょう。

今回大阪で流行した背景には、ある宗教団体の集会、デパートなどのバレンタインチョコレートの販売といった、不特定多数の方が一定の時間過ごす閉鎖空間があるようです。過去には、アイドルのライブ、音楽フェスなどで流行したケースもあります。妊婦さんだけでなく抗体を持たない方は、少なくとも麻疹の流行が収まるまで、人混みに近づかないようにしましょう。

 

 

当院では妊娠9週前後の妊娠初期検査の際に、風疹抗体とともに麻疹抗体も調べています。
また、妊娠を検討されている女性に対するブライダルチェックでも麻疹抗体を検査致します。
まずはご自身の麻疹抗体の有無を確認して、抗体が陰性の場合には今後の予防についてご相談しましょう。