院長コラム

できれば17歳までにHPVワクチン接種を

一時期HPVワクチン接種の「積極的勧奨」を控えていた厚生労働省や各自治体ですが、2020年の今年、定期接種の対象者である小学6年生相当から高校1年生相当の女子に対して啓発パンフレットを配布し、HPVワクチンの接種を促しています。
これは、事実上の方針転換と思われます。
今回は、先日WEBで行われました産婦人科の学術講演会の内容を参考に、若年者がHPVワクチンを接種する意義についてお伝えします。

 

性成熟女性の子宮頚がん予防の重要性

子宮頚がんは20代から増え始め、30代で急増し、40代でピークになります。つまり、性成熟期女性に多く、妊娠への影響が非常に大きいがんといえます。
子宮頚がんの治療は原則として子宮全摘出術であり、そのため術後は妊娠することはできません。初期の子宮頚がんの場合は、子宮頚部円錐切除や子宮頚部摘出術により子宮を温存することはできます。
ただし、妊娠できたとしても流早産のリスクが高まります。
そのため、性成熟女性が子宮頚がんや前がん病変にならないように予防することが、次世代の子供たちにとって非常に重要です。

 

17歳までのHPVワクチン接種で30代までの子宮頚がんリスクを約90%低下

現在わが国で使用されているHPVワクチンは、発がん性が特に高い16型・18型のHPV感染を予防し、その結果子宮頚がんのリスクを50~70%低下させるといわれています。
ただし、海外の研究によると、17歳までに16型・18型に対するHPVワクチンを接種すれば、30代までの子宮頚がんリスクが約90%も低下する、との報告があるそうです。
これは、40歳以上では他の型のHPVが子宮頚がんの原因となることが比較的多いのに比べて、30代までの子宮頚がんのほとんどは16型・18型が原因であるからだそうです。

 

どの年代の方でもHPVワクチン接種は有用ですが、できれば17歳までにHPVワクチン接種を受けることをお勧めします。
行政からHPVワクチンの案内が届いているのであれば、是非小学6年生相当から高校1年生相当の間に、無料でHPVワクチンを接種してしまいましょう。