院長コラム

「我慢しないでシリーズ(1)」~月経困難症を我慢しないで!~

日常診療やプライベートの場で、最近気になることがあります。
それは、「体調不良を我慢している女性が多い」という事です。
特に婦人科疾患については、他人に相談しない方も多く、「我慢するのが当たり前」といった空気があるのかもしれません。
そこで、「我慢しないでシリーズ」と題して、お役立ちプチ情報を提供していきたいと思います。
今回は第一弾として“月経困難症”を取り上げます。

思春期女子こそ月経困難症の管理を

月経困難症とは、月経期にみられる様々な身体的・精神的な病的な症状の事です。
思春期女子にみられる月経困難症は「機能性月経困難症」といわれるものが多く、子宮筋の過剰な収縮や、それに伴う子宮の血行不良などが原因といわれています。
子宮や卵巣に大きな異常はありませんが、月経困難症により学業や部活、友達関係に悪影響を及ぼすことも少なくありません。
また、通常加齢とともに軽快しますが、10代で月経困難症が強い方は、将来子宮内膜症という病気になりやすいことが知られています。
そのため、思春期女子こそ、学校生活を快適におくるためにも、また子宮内膜症を予防するためにも、適切な月経困難症の管理が必要です。
決して我慢せず、市販の鎮痛剤でも痛みが残るようなら、婦人科を受診しましょう。
ちなみに、鎮痛剤を使用する場合、痛みが出てからではなく、痛みが出る前から、できれば月経開始前から服薬すると有効です。
また、「鎮痛剤を服用するとクセになり、効きづらくなる」と考えて、痛みを我慢してしまう方がいらっしゃいますが、むしろ強い痛みにさらされていると、痛みに対して過敏になりやすくなってしまうため、適切に鎮痛剤を服用することをお勧めします。

20~30代女性の月経困難症は仕事・家事・妊娠に直結

20代以降の月経困難症は、子宮内膜症などの病気が原因の「器質性月経困難症」が増えていきます。
子宮内膜症とは、子宮内膜と同様の組織が腹膜や卵巣などに存在し、エストロゲンという女性ホルモンの影響で増殖・出血を繰り返す病気です。
子宮内膜症が進行すると、激しい月経痛だけでなく、月経期以外の下腹部痛や腰痛、排便痛、性交痛などで苦しむことになり、仕事や生活の質が大きく低下します。
また、骨盤腔内の癒着などにより妊娠しづらくなり、不妊女性の約50%に子宮内膜症がみられるといわれています。
このように、20~30代で月経困難症に悩まれている方で、特に将来妊娠をご希望されている場合は、早めに婦人科を受診し、子宮内膜症などの病気になっていないか調べてもらいましょう。

40代後半から50代の月経困難症の場合、子宮内膜症が進行して卵巣チョコレート嚢胞が増大していると、卵巣がんのリスクが高まっている可能性があります。
また、子宮内膜症の方は、心血管系の病気や自己免疫疾患になりやすいとも言われています。
「月経痛は閉経までの辛抱だ」と思わず、是非積極的に婦人科を受診しましょう。