院長コラム
経口避妊薬や低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬は何歳から何歳まで服用できるのか?
数ある避妊法の中でも、わが国で最も避妊効果が高いのは経口避妊薬(OC)です。また、月経困難症の治療薬として非常に有効である低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)は保険の適応があり、月経痛に悩む女性の間で次第に広まりつつあります。
しかし、何歳から服用を開始し、何歳まで服用できるのか、あまり理解されていないようです。
今回は、「女性内分泌 クリニカルクエスチョン90」(診断と治療社)を元に、OC・LEP服用可能年齢について説明します。
Q1 何歳から服用できるの?
A1 初経開始から服用可能です。
思春期女性にホルモン剤を使用する際、骨の成長との兼ね合いが大切です。初経前の低濃度のエストロゲンは骨の成長を助けます。しかし、急激なエストロゲンの上昇により、骨端線という骨の成長つかさどる部分が閉鎖していまい、骨の成長が徐々に抑えられてしまいます。初経を迎える前の時期は、骨の成長に重要な時期でもあるため、その時期にエストロゲンを含むOC・LEPを使用すると、骨の成長を妨げる恐れがあるため使用できません。
ちなみに、9~10歳で5.6cm、10~11歳で7.3cm、11~12歳で7.4cm、12~13歳で4.2cm、13~14歳で2.2cm成長し、15歳前後で身長が固まるといわれています。
ただし、骨端線閉鎖が始まっても、すぐに骨成長が止まるわけではなく、最も身長が伸びる翌年に初経(平均12.3歳)を迎えることから、少なくても初経開始後であればOC・LEPが身長増加の障害になることはないと考えられています。
以上の理由から、当院では初経以降であれば必要に応じてOC・LEPを処方しています。
Q2 いつまで服用できるの?
A2 最長50歳まで、あるいは閉経まで可能です。
OC・LEPの重篤な副作用として、静脈血栓塞栓症(VTE)や動脈血栓塞栓症(ATE)が挙げられます。50歳以上ではOC・LEP 使用者のVTEのリスクが、非使用者と比べて6倍以上も高くなるといわれています。
また、50~59歳1万人の方が1年間に発症する推定人数は、ATEは1.96人、VTEは4.17人であるのに対し、OC・LEP使用者の場合は、それぞれ3.76人、8.46人と倍増します。
以上から、わが国ではOC・LEPの服用可能な年齢を50歳までとしています。もちろん、50歳になる前に閉経された場合は、OC・LEPの服用の必要性がないので、閉経が確認されたら終了となります。
ちなみに、ATEやVETのリスクは加齢とともに上場することが知られており、40歳以上は禁忌ではありませんが、慎重投与とされています。更に肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症などのATE・VETのリスクとなる合併症が、40歳以上に方にみられた場合は、OC・LEPの継続を中止することも考えられます。尚、当院ではこのようなリスクが高い方にはOC・LEPを使用せずに、他の治療法を検討します。
Q3 閉経の診断は
A3 服用休止後のホルモン検査で診断します。
1年間月経がなければ閉経と判断できますが、OC・LEPの服用中は診断することはできません。そこで、50歳近くとなり閉経の可能性が出てきた場合、一旦OC・LEPを中止し、2週間以上経過してから女性ホルモンを検査します。もし、閉経しているのであれば、中止後2週間で血中FSH(卵胞刺激ホルモン)値は40IU/l以上、血中E2(エストラジオール)値は20pg/ml未満となります。
OC・LEPは非常に有益な薬剤であり、特に思春期女性にはもっと使用されてもいいのでは、と考えています。
初経以降であれば若くても使用できます。
予期しない妊娠の予防、月経困難症に治療に、是非OC・LEPをご検討下さい。