院長コラム

排卵日を予測して、性交のタイミングを指導する方法

当院では専門的な不妊検査・治療は行なっていませんが、排卵を予測し夫婦生活のタイミングを指導する、いわゆる“タイミング指導”を行なっています。
今回、当院が排卵日の予測のために行なっている検査について、「女性内分泌 クリニカルクエスチョン90」(診断と治療社)を参考に説明します。

 

 

ホルモンの流れと排卵

卵巣にある卵胞(卵子を入れている袋)は、月経後に下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)の刺激を受け、原則として1つの卵胞が大きく成長します。すると、その卵胞から分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)が増加し、そのエストロゲンは子宮内膜を肥厚させ、受精卵が着床しやすいような下地をつくり、子宮頸管粘液を増加させて、精子が子宮内に入りやすい環境を作ります。

同時に、エストロゲン濃度の上昇が持続すると、下垂体から黄体化ホルモン(LH)の分泌が急激に増加します。これをLHサージといいます。LHの作用により成熟した卵胞が弾けて卵子が腹腔内に飛び出ます。これを排卵といい、多くの場合、同側の卵管に取り込まれて、卵管膨大部という精子との出会いの場所に向かって移動します。

ちなみに、排卵した後の卵胞は黄体という組織に変化し、黄体ホルモンを分泌します。この黄体ホルモンの作用により、子宮内膜は更に受精卵が着床しやすい環境に変化します。

 

 

尿中LHと排卵

LHサージの持続時間は約48時間であり、上昇期14時間、ピーク期14時間、下降期20時間といわれています。排卵はLHサージ開始35~44時間の間、ピーク期の後12~26時間の間に起こるといわれています。

LHは尿中に排泄されるため、尿中のLH濃度を調べれば排卵の予想が可能になります。ただし、単回測定ではLHサージのどの時期かがわからないため、自宅で市販のLHキットを使用する場合は、排卵予測日の数日前から連日検査を行なうことが望ましいでしょう。しかも、できれば1日2回の尿中LH 検査が望ましく、1日1回なら午前11から午後3時の時間帯で検査を行なうと、LHサージが捉えられやすいといわれています。

 

 

超音波検査による卵胞計測

排卵期には卵胞の大きさが18~20mm以上にもなるため、超音波検査で卵胞を計測することで排卵日を予測することが可能です。ただし、単純性嚢胞との区別がつかないことがあるため、月経後の頃から卵胞の大きさを経時的に測定することが大切でしょう。

 

 

当院でのタイミング指導の方法

① 基礎体温を1~2周期つけて頂き、月経周期のどの時期に排卵しているかを予想します。その、排卵予想日の1~2日前に受診して頂きます。

② その日に超音波検査で子宮内膜と卵胞の発育状態を確認します。子宮内膜が着床に適した8mm以上、卵胞の大きさが18mm以上の時には、院内で尿中LHキット(クリアプラン)で計測します。ちなみに、多くの場合で午前9時~午後5時の診察になるため、おおむねLHサージを捉えるのに適した時間帯といえます。

③ 卵胞の大きさが18mm未満の場合や、クリアプランが陰性の場合は、近日中に再検します。

④ クリアプランが陽性の場合、最も妊娠しやすい日を検討します。尚、精子の受精能力は射精後2~3日、卵子に寿命は24時間程度といわれており、排卵前日の性交が最も妊娠率が高いといわれています。

⑤ クリアプランが濃い陽性の場合、LHサージのピーク期と考えられます。したがって、半日後から翌日に排卵する可能性が高く、検査同日の夜に性交して頂くようにタイミング指導します。できれば翌日、翌々日も性交が可能であれば、妊娠の確率は上がると思われます。

⑥ クリアプランがやや薄い場合はLHサージの上昇期である可能性があります。1日半から2日後に排卵すると考え、検査した翌日に性交して頂くようタイミング指導致します。
ちなみに、検査陽性から2日以内に排卵が起こる可能性は90%以上といわれています。

 

 

当院では原則としてタイミング指導は4周期までとし、それまでに妊娠に至らない場合は、不妊症専門の外来へ紹介致します。