院長コラム

異所性妊娠(子宮外妊娠)が疑われた場合

排卵と思われる時期に性交をもって約3週間後、妊娠反応はしっかり陽性であるにもかかわらず、超音波検査で子宮内に妊娠の所見が見えない時があります。
今回は異所性妊娠の可能性がある時の対応について説明します。
尚、以前は「子宮外妊娠」といわれていましたが、現在は「異所性妊娠」と改称されていますので、こちらで表記します。

 

異所性妊娠とは

一般的に精子と卵子は、卵管膨大部という場所で受精し、受精卵は子宮体部の内側にある子宮内膜に着床します。

まれに、それ以外の場所、例えば卵管、卵巣、子宮頚管、腹膜などに着床する場合があり、これを異所性妊娠といいます。

異所性妊娠は全妊娠の1~2%の頻度といわれており、そのうち97%は卵管妊娠で、中でも卵管膨大部で妊娠するケースが最も多いといわれています。

 

妊娠初期の正常所見

通常、妊娠4週ごろ(受精後約2週間)から妊娠反応が陽性となり、正常妊娠であれば、妊娠5週(受精後約3週間)で子宮内に胎嚢という袋が見られます。

つまり、妊娠反応が陽性になり始めてから、超音波検査で子宮内に胎嚢が見られるまで、約1週間のタイムラグがあります。

妊娠6週ごろには胎芽(胎児のもと)と心拍が認められ、妊娠7週ごろには胎芽は約1cmに成長します。

 

異所性妊娠の所見

もし妊娠5週になっても子宮内に胎嚢が認められなければ、ごく初期の流産か異所性妊娠が疑われます。

また、妊娠反応がはっきり陽性であるのにもかかわらず、妊娠6~7週になっても子宮内に胎嚢が認められない時は、異所性妊娠の可能性が非常に高くなります。

さらに、卵管周囲に血塊や、腹腔内に血液貯留が見られた場合は、卵管妊娠による出血、あるいは卵管破裂に伴う腹腔内出血が疑われます。

 

異所性妊娠の自覚症状

軽度腹痛や少量の性器出血を認めることもありますが、妊娠5~6週前後では無症状であることも少なくありません。

腹腔内出血をきたすようになると、下腹痛は増強し、場合によっては上腹部まで疼痛が広がり、嘔気嘔吐を認めることもあります。

さらに出血が増量すると、ふらつき、動悸、意識障害など出血性ショックをきたし、生命にかかわる事態となります。

 

異所性妊娠の治療

卵管妊娠の場合、腹腔鏡下または開腹により、妊娠している卵管を切除することが一般的です。場合により卵管を一部切開し、妊娠組織を除去した後、切開部を縫合して卵管を温存することもありますが、再発する可能性があります。

 

当院での対応

当院では絨毛から分泌されるホルモン量と超音波所見とを検討し、もし異所性妊娠の可能性が高ければ、東京医療センターなど腹腔鏡下手術の経験豊富な高次施設へ紹介します。

また、卵管破裂あるいは破裂寸前の状況であれば、救急搬送させて頂きます。

 

月経が遅れている場合や妊娠反応が陽性となった場合はもちろん、いつもの月経より量が少ない時も異所性妊娠の可能性が否定できませんので、できるだけ速やかに受診して下さい。