院長コラム

胎児水腫が認められた場合

妊娠中の胎児超音波検査で胎児の異常が認められる事があります。
今回は、胎児異常の一つである胎児水腫が見られた場合の、当院での対応について説明します。

 

 

胎児水腫とは

胎児水腫とは、皮下浮腫を伴う全身浮腫、腹水、胸水などを認める状態をいいます。免疫性胎児水腫と非免疫性胎児水腫の二つに分けられますが、ほとんどは非免疫性です。

 

 

免疫性胎児水腫

主にRh式血液型不適合妊娠の際に認められます。RhD抗原陰性の母親が、何らかの原因でRhD抗原に対する抗体を有していると、その抗体は胎盤を通じて胎児へ移行します。胎児がRhD抗原陽性である場合、胎児の赤血球は免疫反応により壊され、重篤な胎児貧血となります。
その結果、毛細血管内の水分が血管外に漏れやすくなるなど、いくつかの要因により胎児水腫となります。

 

 

非免疫性胎児水腫

非免疫性胎児水腫の原因疾患は非常に多く、心血管疾患が20~40%、染色体異常が10~35%、血液疾患が4~12%、原因不明が25%との報告があります。

心血管疾患の場合は、胎児心不全をきたし、その結果胎児水腫となります。染色体異常の場合は、心奇形、消化管奇形など、その他の胎児異常が多発していることも少なくありません。

また、母体がヒトパルボウイルスB19(りんご病)などに感染することで胎児貧血となり、胎児水腫を来たす事もあります。

 

 

当院における対応

妊娠9週頃の血液検査でRh式血液型を検査しますが、母体がRhD抗原陰性であり、かつ胎児水腫が見られた場合は、その時点で国立成育医療研究センターなどの高次施設へ紹介します。

もし、ご家族や職場の方などの近しい方が「りんご病」に感染していたことが判明した場合は、母体のヒトパルボウイルスB19のIgG抗体およびIgM抗体を検査し、母体が初感染の可能性が高ければ、胎児輸血などの治療目的で高次施設へ紹介します。

上記二つが否定的であった場合は、心血管疾患または染色体異常が原因である可能性が高いため、心奇形などの精査目的および胎児の染色体検査目的で、国立成育医療研究センターの胎児診療科などへ紹介致します。

 

 

当院では、できるだけ早めに診断し、適切な時期に高次施設へ紹介することを心がけております。
頻回に通院して頂く事になるかもしれませんが、ご理解の程、宜しくお願い申し上げます。