産婦人科領域における「加味帰脾湯」の使用について|世田谷区の産科・婦人科

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院長コラム

産婦人科領域における「加味帰脾湯」の使用について

更年期障害、月経前症候群や産後精神症状など、産婦人科領域で漢方薬を使用することは少なくありません。
今回は、主に精神症状がある方に使用することが多い「加味帰脾湯」を中心に、情報を共有したいと思います。

 

 

「加味帰脾湯」の効能・効果

添付文書では、虚弱体質で血色の悪い人の貧血、不眠症、精神不安、神経症の症状に用いる、とあります。

さらに、体質虚弱な人が、顔色が悪く貧血気味で、精神不安、心悸亢進、不眠などの精神神経症状を訴え、微熱のある場合、下血、吐血、鼻出血などを伴う場合、寝汗、全身倦怠感、食欲不振などを伴う場合に用いる、とも記載されています。

また、ある報告によると、軽度うつ病や耳鳴・めまいに対する効果も認められている、との事です。

 

 

更年期障害に対する処方

女性ホルモン(エストロゲン)の低下に伴うほてり、発汗、不安感などの不定愁訴を更年期症状といい、治療を要するほどの強い症状を更年期障害といいます。エストロゲン分泌が認められているケースやホルモン補充療法が禁忌の方には漢方薬が用いられます。

当院では、虚弱体質の方の更年期障害に対して、冷え、肩凝り、頭痛など身体症状が主体の方には「当帰芍薬散」、憂うつ、不眠、不安など精神症状が主体の方には「加味逍遥散」を第一選択としています。ただし、2~4週間の処方であまり効果が見られない場合、「加味帰脾湯」に切り替えることも少なくありません。

 

 

月経前症候群(PMS)・月経前不快気分障害(PMDD)に対する処方

排卵から月経までの間、下腹部痛、頭痛、乳房痛などの身体症状や抑うつ、いらいらなどの精神症状といった多様な症状を認めすことがあります。これをPMSといい、特に精神症状が強いものをPMDDといいます。

うつ症状が強い場合は抗うつ剤を用いることもありますが、当院では主に、抑うつが比較的強い場合は「加味逍遥散」、いらいらが強いときには「抑肝散」を使用しています。それでも効果が不良の場合や、抑うつといらいらが同じ程度で、怒り過ぎてヘトヘトになるような方には「加味逍遥散」を使用することがあります。

 

 

産後精神症状に対する処方

産後は、女性ホルモンの急激な低下や育児ストレス、母乳トラブルなど、抑うつ、いらいら、不安感、不眠、食欲不振など様々な精神症状が認められやすい時期です。明らかな産後うつ病の場合はメンタルクリニックへの紹介や抗うつ薬を処方することもありますが、多くの場合、漢方薬で症状が軽快します。

当院では一般的に、乳汁分泌不全を認め、抑うつ傾向のある方には「キュウ帰調血飲」、気分の浮き沈みがある方には「女神散」、疲労感が強い方には「補中益気湯」、貧血症状を認める方には「人参養栄湯」をそれぞれ用いています。ただし、上記では症状が改善しない時には、やはり「加味帰脾湯」へ切り替えるか、併用しています。

 

 

「加味帰脾湯」は、産婦人科領域で第一選択となることはあまり多くありません。
しかし、抑うつや不眠を中心とした精神症状を認める方に対して、非常に使用しやすい薬剤の一つです。
まさに産婦人科領域における漢方界の“名バイプレーヤー”と言えるでしょう。

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