院長コラム

骨粗しょう症の予防方法について

6月1日から世田谷区骨粗しょう症検診が始まります。また、6月1日は「世界牛乳の日」に制定されているそうです。
そこで今回は、世田谷区の啓発パンフレットおよび「日本女性医学学会雑誌2019.vol.2」を参考に、骨粗しょう症の予防方法“3つのポイント”について説明致します。

 

 

(1) 無理なダイエットはしない

骨量は女性ホルモンであるエストロゲンの増加に伴い、思春期に急激に増加します。そして、20歳前後で人生最高となり、その後は維持または漸減していきます。
つまり、思春期から20歳頃までの間に、いかに骨量を増やすことができるかが、将来の骨粗しょう症を予防する意味で大変重要です。

この時期に骨量を増やすためには、「適切な体重による負荷」と「エストロゲン」がキーワードなります。しかし、無理にダイエットをすることで低体重になると、骨への負荷が少なくなってしまうため、骨量は増えません。

また、低体重により卵巣機能が低下すると、エストロゲンの分泌が減少し、無月経になることがあります(体重減少性無月経)。骨量はエストロゲンにより増加・維持されますので、エストロゲンが低下すると骨量は伸び悩む結果となります。

つまり、この時期に無理なダイエットをすると、人生で唯一の骨量増加時期を無駄にすることになります。

 

 

(2) バランスのとれた食事に心掛ける

骨の代謝にはカルシウムだけでなく、タンパク質、ビタミンD/Kなど、様々な栄養素が関係しています。1日3食、主食(穀類・米・パン・麺)・主菜(肉・魚・卵・大豆製品)・副菜(野菜・海藻・きのこ)の揃ったバランスの良い食事に心掛けましょう。

また、乳製品には、吸収率の高いカルシウムが豊富に含まれています。牛乳が飲めない人は他の乳製品で構いませんので、1日1回は牛乳・乳製品を摂るようにしましょう。

「骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2015」によると、カルシウムは食品から700~800mg(サプリメントやカルシウム薬を服用している方は摂り過ぎに注意)、ビタミンDは400~800IU(10~20μg)、ビタミンKは250~300μgの摂取が推奨されています。

ちなみに、ある報告によると、毎日10品目(肉、魚介類、卵、大豆・大豆製品、牛乳・乳製品、緑黄色野菜、海藻類、いも、果物、油を使った料理)をしっかり毎日摂取すればするほど、身体機能が高いことがわかりました。つまり、毎日多くの食品を食べることで、筋肉や骨がしっかり維持されている可能性があるといえます。

 

 

(3) 戸外での適度な運動

世田谷区のパンフレットでは、1日30分の戸外でのウォーキングを勧めています。適度な運動は骨に刺激を与え、カルシウムの骨への沈着を促進し、骨量の増加を助けます。また、紫外線を適度に浴びることにより、腸でのカルシウムの吸収を増加させるビタミンDの合成が促進されるため、結果として骨が増えます。

特に中高年女性の方は、日を浴びたり、適度な運動習慣を身に付けていない方も多いのではないでしょうか。無理のない範囲で、戸外でのウォーキング、ランニングは特にお勧めです。ただし、若年女性は戸外に出て紫外線に浴びる機会は多く、激しい運動をされる方も少なくないと思われます。むしろ、過度の日焼けや標準体重を下回るほどの激し過ぎる運動は控えましょう。

 

 

どのライスステージにいらっしゃる方にとっても、骨粗しょう症の予防は非常に重要です。しかし、決して難しいことではなく、バランスのとれた食事を1日3回摂取し、日の光を浴び、適度な運動を心掛けるだけです。
少しずつ、できる所から始めていきましょう。