院長コラム

当院における切迫早産の管理

当院では小児科医や新生児科医がいないため、原則として妊娠36週未満の早産の分娩管理は扱っていません。
そのため、切迫早産の予防には常に心がけています。
今回は、当院における切迫早産管理について説明します。

 

切迫早産とは

切迫早産とは、早産(妊娠22週以降、37週未満の分娩)の徴候がみられる状態のことです。10分に1回以上の下腹部痛(子宮収縮)、性器出血、破水などの症状や、子宮口開大、子宮頚管の短縮などの所見が認められます。

早産児は呼吸障害や出血など様々な合併症を引き起こすため、積極的に切迫早産の管理を行う必要があります。

 

 

子宮頚管長と早産

一般に正常妊婦さんの子宮頚管長は、妊娠初期から中期では約35~40mmであり、妊娠32週以降では25~30mmに短縮します。

妊娠24週で頚管長が30mm以下および26mm以下に短縮した時、妊娠35週未満の早産になる危険性は、それぞれ約3.8倍および6.2倍に上昇するという報告があります。

また、早産予防として、妊娠週数を問わず頚管長が25mmを下回った妊婦さんをハイリスクとして管理することが必要であるとも言われています。

当院では妊娠16週から28週頃までは全例に、妊娠30週から36週までは子宮収縮を認める方に子宮頚管長を計測し、30㎜未満の妊婦さんには加療または頻回に経過観察しています。

 

 

子宮頚管長短縮の原因

頚管長が短縮する原因として、頸管炎や細菌性腟症といった炎症が考えられます。そのため、早産マーカーである頚管粘液中顆粒球エラスターゼという炎症物質や腟分泌物の細菌を検査することで、早産予知および早産予防に役立てています。

 

 

切迫早産の治療

切迫早産の治療としては、まず安静にすることが大切です。それでも子宮収縮や頚管長の短縮があれば子宮収縮抑制剤「ウテメリン」の内服を開始します。

内服薬と安静でも切迫早産の所見が軽快しないときは、国立成育医療研究センター、日赤医療センター、東京医療センター(妊娠30週以降)などへ紹介致します。

また、腟分泌物の細菌培養でガードネレラ菌などによる細菌性腟症が認められる場合には、切迫早産の移行する可能性があるため、腟内洗浄および抗生剤「フラジール腟錠」の腟内挿入を6日間行っています。

 

 

切迫早産になった場合、自宅安静が必要になります。特に、お仕事を持たれている方、上のお子さんがいらっしゃる方は大変だと思いますが、職場やご家族の方々にご協力して頂き、是非安静にお過ごし下さい。