院長コラム

妊娠中のトキソプラズマ感染

ネコを飼っているご家庭も多いと思いますが、妊婦さんがいらっしゃる場合は注意が必要です。
今回は妊娠中のトキソプラズマ感染について説明します。

 

 

トキソプラズマとは

トキソプラズマはネコ科動物に奇生する寄生虫で、ブタ・ウシ・ヒツジなどの生肉食、ネコなどの糞尿の処理、農作業やガーデニングなどで人にも感染します。

通常感染しても8割は無症状で、症状が出たとしても倦怠感・筋肉痛・発熱・リンパ節腫脹などの軽度の感冒様症状程度であり、数週間で回復します。

感染の既往があれば心配いりませんが、妊娠中の初感染の場合は、胎児への影響があるため注意が必要です。

 

 

妊娠中に初めて感染すると

先天性トキソプラズマ感染症は、胎児発育遅延、頭蓋内石灰化、脳室拡大、脈絡膜網膜炎、水頭症、小眼球症、精神・運動障害などを引き起こします。

尚、妊娠14週未満での感染では胎児感染の頻度は10%と低く、妊娠28週以降の感染ではその頻度が60%と高くなりますが、妊娠週数が早い感染の方が重症化するといわれています。

 

 

トキソプラズマの検査方法

当院では妊娠初期に、トキソプラズマIgM抗体を検査しています。
もし、IgM抗体が陽性であった場合はIgG抗体を調べます。
もし、IgG抗体、IgM抗体ともに陽性であった場合は、妊娠中に初感染した可能性の否定できません。
その際は、精査目的で国立成育医療研究センターなどに紹介致します。

 

 

トキソプラズマ感染症の治療法

以上の検査で母体の初感染が疑われた場合は、アセチルスピラマイシンという抗菌剤の内服が勧められます。これにより、約半分の胎児感染が予防されるとの報告がありますが、定期的な胎児の観察と生まれた後の新生児の経過観察は必要です。

 

 

トキソプラズマ予防法

1) 食事からの感染予防

・ 肉類は十分に加熱して食べる。生ハム・生サラミからも感染する。
・ 
野生動物のジビエ料理はしっかり加熱調理する。
・ 野菜や果物は土を落として、よく洗ったうえで食べる(調理する)。
・ 肉類や洗浄前の野菜や果物を扱った用具、手指はよく洗浄する。
・ 猫をキッチンや食卓に近づけない。

2) 環境からの感染予防

・ 飲料水として提供されている水以外は飲まない。
・ 土を触る際は手袋を着用し、土を触った後は手指をよく洗浄する。
・ 子どもにも手指洗浄を習慣づける。
・ 妊娠中に新たな猫を飼わない。
・ 飼い猫は部屋飼いとし、キャットフード以外のものを食べさせない。
・ 猫のトイレの交換は妊婦以外の者が毎日実施する。

 

 

妊娠が判明したら、できるだけ猫や土に触れず、肉は十分加熱しましょう。
また、感染リスクのある中南米・中欧・アフリカ・中東・東南アジア・豪州への旅行は気を付けましょう。