院長コラム

妊娠とアトピー性皮膚炎

成人の5~10%が罹患しているといわれているアトピー性皮膚炎。妊婦さんの中にもアトピー性皮膚炎に悩まされている方が多くいらっしゃいます。
今回は妊娠とアトピー性皮膚炎について説明します。

 

 

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎とは「増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患」であり、患者の多くはアトピー素因(アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎の家族歴・既往歴など)を持つとされています。

主な病態は、皮膚の乾燥などによる皮膚バリア機能障害とアレルギー反応です。

 

 

妊娠中のアトピー性皮膚炎の変化

妊娠により50%以上の患者さんは、妊娠中期から後期にかけてアトピー性皮膚炎の症状が増強します。
その理由として、以下のことが言われています。

① 妊娠により免疫状態が変化し、アレルギー反応が増強する

② 女性ホルモンの分泌亢進により、アレルギーに関与している肥満細胞が活性化する。

③ 妊娠により発汗が増え、皮膚症状が悪化する。

④ ストレスにより皮膚を掻いてしまい、皮膚炎を悪化させてしまう。

⑤ 胎児への影響を心配し、妊娠前から使用していた薬剤を妊娠判明後に減量・中止してしまう。

 

 

妊娠中のアトピー性皮膚炎の対処法

妊娠中も非妊娠時と同様、皮膚バリアを守る対応とアレルギーに対する治療が主体となります。

① スキンケア

入浴やシャワーで皮膚を清潔に保ち、水分蒸散を防止するためのワセリン、水分保持作用を持つヒルドイドソフト軟膏などを塗布することで皮膚の保湿に心がけます。

② 抗アレルギー外用剤

比較的マイルドなステロイド軟膏であるロコイド軟膏を使用し、症状によってはより強いステロイドへ切り替えていきます。

③ 抗アレルギー内服薬

外用剤だけでは改善しない場合、ザイザルなどの第二世代抗ヒスタミン薬の服用が必要になります。服薬しても胎児に与える影響はないと考えていいでしょう。

④ 漢方療法:抑肝散加陳皮半夏

主に、いらいらや不眠に対して用いる漢方薬ですが、痒み自体に対してもある程度の軽減効果を期待できます。

 

 

妊娠前からアトピー性皮膚炎の治療をされている方は、自己判断で薬物の減量や治療の中断をすることなく、必ずかかりつけの皮膚科の先生とご相談下さい。