院長コラム
“健康マネジメント”という考え方
今回は、東京慈恵会医科大学教授の横山啓太郎先生がお書きになられた「健康をマネジメントする」(CCD]メディアハウス)を元に、「健康マネジメント」の重要性について共有したいと思います。
「緊急でないが重要なこと」
世界的なベストセラー「7つの習慣」(スティーブン・R・コヴィー著)をお読みになった方も多いかも知れませんが、その中に「時間管理のマトリックス」という考え方が紹介されています。これは、人の活動を「重要度」と「緊急度」の観点から、第1領域「緊急で重要なこと」、第2領域「重要だが緊急でないこと」、第3領域「緊急だが重要でないこと」、第4領域「緊急でも重要でもないこと」の4つに分類するというものです。
第1領域や第3領域の「重要度にかかわらず緊急なこと」はストレスの元になり、肉体的にも精神的にも疲弊し、ストレス解消するために緊急でも重要でもない第4領域に時間を費やしてしまうことになります。そのため、自分の人生を有意義なものにするには、第2領域「重要だが緊急でないこと」を最優先に取り組むことが大切であるとの事です。筆者は、健康をマネジメントすることはこの第2領域に相当し、中長期的な視点を持って続けなければ成果が出ない、と述べています。
「体は時間をかけて作られた財産」
健康マネジメントを習慣化するためには、健康に対するマインドを変える必要があると、筆者は説きます。体は、生まれた時から今日までの食事や運動、睡眠という毎日の習慣によって、長い時間をかけて作り上げられた「財産」であり、日々の習慣は「体を作るための投資」であるとの考えが大切です。
つまり、適切な運動、バランスの取れた食事、良質な睡眠、ストレス解消の適度な休息など、健康にいい投資を過去にどれだけして生きたか、そしてこれからどのような投資を行なっていくのか、ということが非常に大切であると思われます。
ただし、筆者によれば「自分自身が健康を維持するためには、無理なく自分にあった方法で健康マネジメントを継続することが大切で、必ずしも全方位で頑張る必要はない」と語っています。あまりに最初からハードルを高く設定しすぎると、長続きしません。自分の生活に合わせて、無理のない習慣を決めて維持していくことが大切なようです。
「今の自分を知り、どうありたいかを考える」
健康マネジメントでは、現在の体の状態を把握することが大切で、健康診断の結果を確認することも非常に重要です。筆者は特に体重・血圧値・肝機能・血糖値・ヘモグロビンA1c・中性脂肪・LDL(悪玉)コレステロール・HDL(善玉)コレステロールの数値を経時的に見ていくことを勧めています。
また、自分が将来どうありたいかを考えることも大事であり、「死ぬ直前まで自分で自分のことができる程度の健康を保ちたい」というのであれば、それを実現するための「投資」が必要になります。より良い生活習慣について、多くの方は頭ではわかっていると思いますが、実行するのは大変です。将来どうありたいかをじっくり考えることが、健康マネジメントを習慣化させる一つのきっかけになるかも知れません。
人生100年時代、健康寿命をできるだけ延ばすためには、この「健康マネジメント」という考え方は必須と思います。
加齢による変化は止める事はできませんが、健康マネジメントによって老化をソフトランディングさせることはできるかもしれません。
私自身、少しでも健康にいい習慣を取り入れて、皆様にお伝えできればと思っています。