院長コラム
ホルモン補充療法の「各種がん」「子宮筋腫・子宮内膜症」への影響
前回はホルモン補充療法(HRT)と「乳がん」「子宮体がん」との関連についてお話しましたが、今回は「子宮頚がん」「卵巣がん」「消化器がん・肺がん」および「子宮筋腫・子宮内膜症」との関連について説明します。
子宮頚がんのリスク
子宮頚がんは組織のタイプにより、扁平上皮がんと腺がんに分けられます。
扁平上皮がんに対しては、HRTがリスクを上げることはありませんが、腺がんに対しては、5年以上の使用でリスクが上がったとの報告があります。
ただし、治療後のHRTにより、扁平上皮がん、腺がんともに再発リスクが上がった、とのと報告はありません。
当院では、特に扁平上皮がんの治療後の方に対して、必要に応じてHRTを行っています。
卵巣がんのリスク
HRTにより卵巣がんのリスクが多少上がるという報告や、期間が長いほど卵巣がんのリスクが上昇するとの報告はありますが、あまり詳しくは分かっていません。
また、治療後のHRTで再発しやすいとの報告はありませんが、慎重に施行すべきといわれています。
当院では、卵巣がんの既往がある方には、原則としてHRTを行っていません。
消化器がん・肺がんへの影響
HRTは大腸がん、胃がん、食道がん(腺がん)、肝細胞がんのリスクを低下させるといわれています。
肺がんに対しては不明な点もありますが、最近の報告では、リスクを低下させる可能性がある、といわれています。
子宮筋腫・子宮内膜症への影響
子宮筋腫や子宮内膜症はエストロゲンの影響で増大・増悪するため、通常は閉経になると症状はおさまります。
もし、更年期障害などに対してHRTを使用したとしても、子宮筋腫を増大させる可能性は低く、子宮内膜症が再燃するリスクも10%以下と報告されています。
そのため、当院では、子宮筋腫や卵巣チョコレートのう胞の大きさなどに注意しながらHRTを行っています。
HRTの開始および継続を決めるにあたり、その適応や効果だけでなく、各種がんや婦人科疾患への影響も考慮しております。