院長コラム

ホルモン補充療法と「乳がん」「子宮体がん」との関連

前回ホルモン補充療法(HRT)の効果についてお伝えしましたが、今回はHRTとがん(乳がん・子宮体がん)との関連についてお話します。

以前から“HRTは乳癌になりやすい”との話が広まっており、HRTがあまり普及しない理由の一つとなっていますが、実際はどうでしょうか?

 

乳がんのリスク

乳がんとの関連を考える際に、ホルモンの種類別に検討する必要があります。

① エストロゲン+プロゲスチン(プロベラ)

5年未満の施行であれば、明らかなリスクの上昇はありません。

5年以上の施行で若干リスクは上昇します。
HRTを施行しない場合、1年間で10,000人に30名が発症するのに対し、HRTを施行した場合は、10,000人に38名が発症します。

つまり、HRTにより10,000人のうち8名が増加する程度であり、生活習慣(飲酒・肥満・喫煙など)が乳癌に及ぼす影響と同等か、むしろ下回るといわれています。

 

② エストロゲン+プロゲスチン(デュファストン)

乳がんのリスクに影響なしといわれています。
当院では、内服薬としてプロゲスチンを使用するときは、原則としてデュファストンを第1選択としております。

 

③ エストロゲンのみ

 子宮がある方は、子宮体がんを予防する意味でプロゲスチンを用いる必要がありますが、手術で子宮を摘出された方にはプロゲスチンを使用する必要がないため、エストロゲンのみの使用になります。
その場合、少なくとも10年程度の使用ではリスクを上げることはない、と言われています。

当院でも、子宮摘出術後の方にHRTを行う時は、エストロゲンの内服薬または経皮剤を単独で用います。

 

子宮体がんのリスク

前述のように、プロゲスチン併用により、子宮体がんリスクは低下します。

投与方法ですが、エストロゲン投与28日間に対してプロゲスチン14日間を周期的に投与する方法(周期的併用投与法)よりも、プロゲスチンも28日間連続して投与する方法(持続的併用投与法)の方が、リスクは低下するといわれています。

 

当院ではHRTを施行している方全員に、年に1回の乳がん検査(超音波検査、マンモグラフィーを毎年または隔年)を、子宮を有している方には更に、子宮体がん検査(子宮内膜細胞診または経腟超音波検査)を受けて頂いており、がんの早期発見に心がけております。