院長コラム
「乳児用液体ミルク」備蓄のススメ
食品衛生法の改正に伴い製造・販売が可能になった乳児用液体ミルクですが、ご退院のお土産や災害用の備蓄として、当院でも導入することに致しました。
今回は乳児用液体ミルクについて説明します。
わが国の乳児用液体ミルク誕生まで
昨年までわが国では、乳児用液体ミルクは法律上製造・販売が禁止されていました。しかし、2016年4月の熊本地震の際、フィンランドから緊急輸入されたことで注目され、2018年8月、食品衛生法の一部が改正され、乳児用液体ミルクの規格基準が決まり、法的に整備されました。
2019年1月には江崎グリコと明治が製造・販売のための厚生労働大臣承認を受けて、春から発売されております。この度当院では、明治の「らくらくミルク」を導入することと致しました。
「らくらくミルク」の特徴
① 内溶液が無菌のため、温め不要
充填後に高温殺菌を行っているため、内容液は無菌となっています。缶ふた天面のほこりや汚れが気になる場合は、赤ちゃん用の手口ナップで拭いて頂きます。
開封後はすぐに哺乳びんに移し変えて赤ちゃんに与えますが、もし温めたい場合は、耐熱性のある哺乳びんに移し変えてから温めて頂きます。
尚、安全性確保のため、飲み残しの使用はお控え下さい。また、高温殺菌により液体が茶色へ変色しますが、もちろん品質的に問題ありません。
② 1本240mlに設定
市販の哺乳びんの容量の多くは240~250mlであり、3ヵ月以降の赤ちゃんの1~2割は1回の授乳あたり220~240mlのミルクを飲んでいるといわれています。
また、災害発生下では避難などにより授乳間隔があいてしまうため、赤ちゃんがおなかをすかせる事が増え、1回あたりの授乳量が通常よりも多くなることが予想されます。
以上をふまえて、1本240mlに設定しているとの事です。
③ 賞味期限は製造後12ヶ月
保存剤は不使用ですが、密封性・遮光性・堅牢性が高いスチール缶を使用しており、常温で製造から12ヶ月の保存が可能です。
④ 備蓄の目安は7日分:35缶
内閣府は防災対策として7日間の食料・飲料水の備蓄を推奨しています。「らくらくミルク」の1人あたりの推奨量は1日5缶ですので、7日分35缶以上を備蓄していくことが望ましいでしょう。
災害時だけでなく、お出かけの時、深夜の調乳、人に預けるときなど、様々な場面で使用が可能ですので、賞味期限が近くなったら使用し、使った分は補充しておきましょう。
乳児用液体ミルクは「調乳作業が不要」で、「常温保存が可能」で、「70度以上の温めは不要」です。
過去の災害から得られた教訓の一つが、この乳児用液体ミルクです。1歳までの赤ちゃんがいらっしゃるご家庭は、是非備蓄をご検討下さい。