院長コラム

女性とロコモティブシンドローム

ロコモティブシンドローム(以下ロコモ)は、運動器の脆弱化を包括的に表す概念で、「運動器の障害により、移動機能が低下した状態」と定義されています。
今回は、女性のヘルスケアとロコモについて、「日本女性医学学会ニューズレター2019年5月号」の記事などを元に、情報をお伝え致します。

 

 

運動器の健康維持と女性の健康寿命

運動器疾患と運動機能低下をあわせて「運動器障害」といいますが、転倒・骨折や関節疾患など、運動器障害に関連する要支援・要介護禁停車は、全体の約25%といわれています。

したがって、健康寿命を延長させるには、運動器の健康維持、すなわちロコモ予防が非常に大切です。特に女性は男性と比べて骨粗鬆症罹患率が高く、筋肉量が少ないため、女性のヘルスケアを語る上で、ロコモは切り離すことができない問題です。

 

 

ロコモの評価法

ロコモの評価は、簡便な自己チェック法である「ロコチェック」とロコモの判定法である「ロコモ度テスト」の二つがあります。

ロコチェックは、以下の7つです。

「片脚立ちで靴下が履けない」
「家の中でつまずいたり、すべったりする」
「階段を登るのに手すりが必要である」
「家のやや重い仕事が困難である(掃除機の使用・布団の上げ下ろしなど)」
「2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である(1リットルの牛乳パック2個程度)」
「15分くらい続けて歩くことができない」
「横断歩道を青信号で渡りきれない」

以上7つの内、1つでも該当項目があると、その時点で運動機能低下が疑われ、ロコモのリスクがあると考えられます。

また、「ロコモ度テスト」は3つのテストで構成されます。「立ち上がりテスト(下肢筋力の評価)」「2ステップテスト(下肢筋力・バランス能力・柔軟性の評価)」「ロコモ25(運動器障害の早期発見のための調査票)」で、整形外科などでの診断に用いられます。

 

 

ロコモ対策

ロコモ対策は、以下の4つが言われています。

① 運動習慣

全ての運動がロコモ予防には有用ですが、特に日本整形外科学会から、ロコモーショントレーニング(ロコトレ)が推奨されています。

これは「片脚立ち(バランス能力)」と「スクワット(下肢筋力をつける)」の二つが基本になります。その他、ふくらはぎの筋力をつける運動(ヒールレイズ)、下肢に柔軟性、バランス能力、筋力をつける運動(フロントランジ)を追加することもあります。

無理しないで継続することが大切です。

 

② 適切な栄養摂取

バランスの取れた食事と十分なタンパク質、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKの摂取が重要です。

特に、最近はビタミンD不足と骨折の関連が指摘されており、ビタミンDを多く含む食品(きくらげ、さけ、うなぎの蒲焼、さんま、ひらめ、いさき、たちうお、かれい、めかじきなど)を積極的に摂取するようにしましょう。

 

③ 活動性の高い生活

できるだけ社会参加や外出の多い活動的な生活が勧められています。

 

④ 運動器疾患に対する評価治療

関節痛、腰痛など運動器疾患や運動器関連の痛みが生じたときは、早めに整形外科などを受診され、適切に治療して頂く事がロコモの進行を防ぐ意味で重要です。

 

 

閉経後女性は、女性ホルモンの減少に伴い骨密度が低下するため、骨粗鬆症になりやすく、何もしなければ骨折や寝たきりのリスクが増加します。
高齢期を健康に過ごすためにも、性成熟期あるいは思春期から運動や食事に気を付けて、将来のロコモを予防することが大切です。