院長コラム

女性の下部消化器症状に効果的な漢方薬

通常、便秘や下痢に対して下剤や整腸剤で対応することが多いのですが、あまり効果がない方に対して漢方薬を用いると、非常に有効であるケースが見られます。
今回は、「ツムラ」の資料などを参考に、様々な下部消化器症状に対して効果的であるといわれる漢方薬を紹介します。

 

 

○ 月経のトラブルや高血圧の随伴症状が見られる便秘の方
    ⇒桃核承気湯

比較的体力があり、便秘しがちの方に処方します。高血圧の随伴症状である頭痛・めまい・肩こりや不眠・不安などの精神神経症に対しても有効です。
婦人科関連では、月経不順、月経困難症、月経時や産後の精神不安などにも用いることがあります。

 

○ 常習便秘の方⇒大黄甘草湯

常習便秘に広く用いられる漢方薬です。ただし、著しく胃腸が弱い方が服用すると、下痢や腹痛をきたす可能性があります。

 

○ 胃腸機能が低下した方の便秘⇒潤腸湯

体力が中等度あるいはやや低下した方や、高齢者で胃腸機能が低下した方に用いる漢方薬です。皮膚が乾燥し、腹壁が弛緩し、お通じの塊が腹壁から触知できるような便秘に有効とのことです。

 

○ 腹部が冷えて腹部膨満感がある方⇒大建中湯

四肢や腹部が冷え、腹痛、腹部膨満のある方に対して、当院では第一選択で使用しています。また、開腹術後の腸管通過障害に伴う腹痛や腹部膨満感でも広く用いられています。

 

○ 下痢と便秘を繰り返す方⇒桂枝加芍薬大黄湯

比較的体力が低下した方で、腹部膨満感や腹痛があり、下痢と便秘を繰り返す方に用いられます。腸内の停滞感を改善する作用があるため、便意を催すが快く排便できない場合に有効との事です。

 

○ 浮腫・悪心・嘔吐・下痢の方⇒五苓散

体力的に元気な方から虚弱の方まで、ほぼ全ての方が服用できる漢方薬です。浮腫・悪心・嘔吐・下痢のほか、めまい・頭痛、口渇など、水の分布を調節する作用により、様々な症状を改善させます。尚、二日酔にも有効です。

 

○ 急性胃腸炎で水瀉性下痢の方⇒柴苓湯

柴苓湯には五苓散の生薬が含まれているため、五苓散と同様な作用がありますが、それに加えて炎症を抑制する働きがあります。急性の感染性胃腸炎に伴う水様性の下痢には、大変有効であるといわれています。

 

○ 胸焼け、みぞおちのつかえがあり、精神神経症状を認める下痢の方
  ⇒半夏瀉心湯

みぞおちのつかえ、食欲不振、げっぷ・胸焼け、おなかが鳴る方の下痢や軟便に有効です。また、不安・不眠などの精神神経症状にも有効です。

 

○ 新陳代謝が低下し、四肢冷感の下痢の方⇒真武湯

体力・胃腸が虚弱で、全身倦怠感や四肢冷感があり、下痢、腹痛などを訴える方に処方します。急性よりも慢性の腸炎に対して用いられることが多いようです。また、めまい、身体動揺感にも有効です。

 

 

当院では下部消化器症状に対して、以上の漢方薬単独あるいは西洋薬と組み合わせにて対応しています。
ただし、バランスのとれた食事、適度な運動、規則的な生活を心掛けることが、消化器症状の改善・予防にとって何より大切です。
また、女性の場合、月経中は下痢になりやすく、月経前は便秘になりやすい方がいらっしゃいます。
個々の症状や体質に合わせて対策を考えますので、まずはご相談下さい。