院長コラム

HPVワクチン接種に関するQ&A

国や自治体がHPVワクチン接種を積極的に勧奨するようになり、定期接種に関心を持たれる方が増えているようです。
この傾向は、女性だけでなく、思春期のお嬢様を持つお父様の間にも広がっている印象があります。
また、SNSやママ友による口コミの影響なのか、お嬢様にHPVワクチン接種を勧める親御様が増えているようにも思えます。
今回は、日常診療だけでなく、知人・友人から尋ねられたことがあるHPVワクチンに関する質問に対し、お答えしたいと思います。

 

Q1.子宮頚部の病気(異型性)で経過観察中であっても、HPVワクチン接種は可能か?

A1. 可能です。ただし、子宮頚部異形成であると診断された方や、ハイリスクHPV検査で陽性であると言われた方の場合、すでに感染しているHPVを排除したり、子宮頚部病変の進行をくい止めることは、残念ながらできません。
ただし、そのような方であっても、ガーダシルやシルガード9で予防可能なHPV型すべてに感染している確率は、ほとんどないでしょう。
したがって、これらのワクチン(特に9価ワクチン)を接種することによって、これまで感染することがなかったHPV型に、今後も感染されないようにすることが期待できます。

 

Q2.50歳以上でも接種した方がいいか?

A2. HPVワクチン接種は、46歳以上の方にはお勧めしません。
HPVワクチン接種の意義は、ワクチンにより免疫力をつける事であり、その効果は加齢とともに弱くなります。
「産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2020」によると、最も推奨される年齢は10~14歳、次に推奨されるのは15~26歳となっており、ほぼ定期接種世代とキャッチアップ世代がこれに含まれます。また、27~45歳の場合、ご希望される方に対しては、接種することが可能です。
そうは言っても、できれば無料接種券が使用できる間にHPVワクチンを接種することをお勧めします。

 

Q3.過去に2価ワクチン「サーバリックス」あるいは4価ワクチン「ガーダシル」の接種を3回終了していても、9価ワクチン「シルガード9」を更に3回接種することができるのか?

A3.理論上は追加で接種することはできますが、実際にはお勧めしていません。
海外でも推奨していないようです。
9価ワクチンといえども子宮頚がんを100%予防することはできません。
どのHPVワクチンを接種していたとしても、20歳以上になれば定期的に子宮頸がん検診を受けて頂く事が、子宮頚がん予防には欠かせません。
10万円以上かけて自費で9価ワクチンを3回接種するくらいなら、2年に1回800円で子宮頸がん検診(世田谷区の場合)を受けて頂く事の方が、有用であると思われます。

新年度、皆さん様々な目標をたてられたと思います。
その中には、健康に関する目標も多いのではないでしょうか。
小学校6年生から26歳までの女性で、HPVワクチンを3回接種されていない方は、是非、令和5年度の行動目標として“HPVワクチン接種”をご検討下さい。